赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>帽子屋
……嗚呼、そうみたいやね
(まるで彼の有名なあの童話を知らないかの様な反応に此方も目を丸くする。様々な思考が頭を駆け巡った後に弾き出した答えは、この世界ではあの物語はきっと認知されていないのだろうという結論で。確かに主人公の少女は何だかんだと元の世界に帰れたあの童話と、帰れないかもしれないこのクニはまた別物なのだろうけど。他に何か相違点は無いものか、そこまで考えて案外この状況を楽しんでいる自分に気が付けば根っからの研究者気質に苦笑しながらも彼女からすれば曖昧だろう返事をし。突然の事に硬直してしまった彼女の髪が視界の端でゆらりと掠める。そうして僅かな間を置いて、急変した態度を咎めるでもなく問うでもなく、改めて賛辞を送る彼女はきっと自身の言葉の裏を理解しての発言だったのだろう。一度牙を剥いたのは此方だというのに全く敵わないなと眦を下げれば、「…君ほどじゃあらへんよ」と惜しみない言葉を送り。堂々たる振る舞いで先を行く彼女の背を追い掛けつつ、着いた先、香りの花開くお茶会で二つの全く異なる視線を受け止めれば、常日頃講堂で数十数百もの視線に晒されていた為か特に気怖じする事もなく頭を下げて。「ええ、宜しく。本日からお邪魔させて頂く鷹山と言います。…チョコレートフレーバーなんて珍しいね。どうも有難う、眠りネズミさん?」ふわふわとろとろ、緩やかに紡がれる言葉は彼の纏う雰囲気によく似合う。紹介は受けていないが、事前に知らされていた名から推測し名前と共に感謝の言葉を口にしながら、一先ず勧められた席へと着いて。チョコレート、なんて聞いたからか余程甘ったるいのかと思えばストレートで淹れられたそれは香りだけ甘く甘く鼻腔を抜け、舌に残るのはしっかりとした紅茶の美味さ。あ、美味い。気を張っていた訳ではないが、自然と肩の力が抜けて思わず言葉が口をついて出るくらいには気に入って、「べらぼうに甘いのかと思ったけどそうでも無いんだね。紅茶が美味しいのか、入れ手がお上手なのか。すごく美味しい」そう穏やかに笑みを浮かべては眠たげな彼へ少々の興奮を滲ませつつ感想を伝えて。)
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