赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>公爵夫人
( 頭上へと降って来た扇子を避ける術は無かった。拒否でも承諾でもない衝撃は予想していたものと違ったから。痛みとして認識される程では無いが確かに受けたあまりに新鮮な“叩かれる”と言うそれに元より沸点が低いその感情は明らかな苛立ちを含み「てめェ…」ドスの効いた地の底を這うような低い低い低音を響かせて扇子を持つ腕を捉えようとして。されどそれよりも早くに扇子は己の顎を捉える。意志とは関係無く頭を上げられる感覚に視線は鋭さを増すばかり。流石に我慢の限界だ。頭を振る事で熱も何も篭っていない無機物から逃れるも、瞬時に近付いて来た顔が重なるのに時間はかからない。相手が立ち上がった事でぶつかったテーブルが小さく揺れてグラスがカタンと音を鳴らしたそれを鼓膜に捉えて__噎せ返るお酒の匂い。一瞬のうちに顔は離れまるで名残惜しむように繋がった銀の糸をたち切るように舌なめずりを。「餓鬼に逃げ道を与えてやったンだよ。大きなお世話だったみてェだがな」口付けの前に紡がれた言葉に対する可愛げの無い返事を今ここで返しては、ペロリと自らの唇を舐めて余韻を味わい )
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