赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>ジャバウォック
体は頑丈だし、大丈夫だ。それに、仮に跡が残ったにしてもこれ位なら子猫に引っ掻かれた様なものものだからな。(暗色の双眸を細めながらくすりと喉奥を低く鳴らす。強がりでも見栄でもない。これ位の負傷ならこの国に来る前は日常茶飯事だった。今回だって彼の家を捜す為に―方向音痴っ振りが災いして―半日近く夏の兆しが見え始めた太陽光の下を歩き回ったせいで体力を消費しただけに過ぎない。渡されたタオルを片手に額に滲む汗や、首筋を伝う雫を拭き取りながら彼の後ろに続く「いや。夢見が悪くなりそうだから要らない」取り留めのない冗談とは分かっているが子守歌はご遠慮願いたいところ。案内された簡素な部屋。来客用に拵えたものだろうか、あまり使っている様子の見られない寝台の方へ、足を進め。ベッドの淵に軽く腰を降ろしながら彼を見上げ「シャツは元々借りようと思ってたんだ。聞く手間が省けて良かったぜ」なんて、悪びれもなく笑って見せる。相手の名前を覚えることは早々に放棄し、家のそこかしこにあった、何なら今でも壁越しに微かに聞こえる秒針の音から勝手に名前を作り出して呼びかけ。回りくどく問いかけるのは面倒だ。それに今はさっさと寝たいのだから、用件は手早く済ませてしまおう。口許に浮かべた笑みは絶やさぬまま、値踏みする様に細めた蒼眼には一切の温度はなく)オレはレオナルド。……時計屋さんは、あの子たちのことを知っているのか?Reginaによく似た双子みたいな子達。クローンだって小耳に挟んだんだが、この国は軍事戦争でも始める予定か?
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