赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>レオナルド
(怪我をしたならば手当てが必要、――手当てとは?。必要最低限の知識を与えられていなければ一から十まで何も分からない、そもそも痛覚の感覚さえもが曖昧なのだ。伸ばされたと思った彼の腕の動きを観察するように眼に映す。確かに伸びて来たその腕が、途中で引っ込まれるとその気遣いさえも気付かずに疑問として姿を浮かすばかり。「――ソーイングセットなんて、今必要?。怪我を治療するのが先、痛くないのは"嘘"なんでしょう」ソーイングセットと言えば縫物に使う品、帽子屋が成功作の縫いぐるみを直すのに使っていた物。記憶を辿ればそれ以外の使い道を知らないからこそ、暢気に縫物でも始めるのかと真面目に思ってしまう。苦笑は痛みから生まれた物、にも拘らず縫物?と重なる疑問に皴が眉間に刻まれると、まるで頼りになるのは自分だけとでも言う様に他のアリスを手当てする住人を遠目に見ていた過去の記憶を手繰り寄せ、ガサゴソと無造作に置かれる机の中を探り。取り出したのは一度も使われたことの無い小さな救急箱、確か白い布を巻いていた。救急箱を手に彼の元へ戻れば「縫物なら後でだよ」机の奥より見つけた針と糸と糸切狭くらいしか入っていない小さなソーイングセットを彼へと渡し。白い布、白い布、とそればかりを頭に包帯を取り出して「巻くから動かないで、初めてだから協力してくれなきゃ出来ないよ」依然変わらず濃い匂いが鼻を掠める。嫉妬したのは事実、だが自らにも成功アリスのような残虐性があったなんてと突きつけられるような思いが浮かび、痛々しい傷口に後悔が浮かぶ。つい、__ごめんなさい。と音無く口の動きで小さく漏れた。は、と我に戻ると手にしていた包帯を伸ばすように解いて)
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