赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>白の女王
(何も考えずクリスマスの雰囲気に浮かれていたのがまだ先日の事だというのに、気が付けば今年のカレンダーの残りも早数日。何だかあちらこちらがバタバタと忙しなく、そんな城内の雰囲気に所在なさを覚えれば追い立てられる様にして外に出たのが数十分前のこと。とはいえ元より行くあてがあった訳でも無く、ぶらぶらと彷徨い歩きながら冷たい風に吹き付けられた身体は自然と暖を求める。それ故どこかに避難場所でもないかしらと、頭の中で選択肢をあげていき。ドールハウスはまず除外するとして、お菓子屋さんは城と同じく雑事に追われていそうだし、最近会っていない双子の所にお邪魔するのは気が引ける。ここで今更ながら行くところが無い事に気が付けば、己の浅はかさを呪いながらううむと唸り。ぐるぐるとその場で行ったり来たり悩んでみたが、残念なおつむは思考型に出来ていない。早々に考えることを放棄すれば新たな出会いと、大きくは避難場所を求めて、何時もの森へ足を向けよう。一面真っ白の中どこをどう通ったのだか、気が付けば森を抜けていたらしく、目の前には見慣れたお城。いや、違うのはその色か。普段暮らすお城の赤は己にとって恐ろしい色だがそこに大好きな人の面影が重なる為か、どことなく暖かい印象を受ける。が、このお城はどうだろう。今にも雪景色の中に溶けてしまいそうな白さと冷たさは、病院で読んでもらった絵本に出てくる雪の女王の住むそれのよう。果たしてこんな所で暖は取れるだろうか。主人公の男の子のように冷たい心にされてしまわないだろうか。そんな何とも幼稚な悩みを抱くも、どうせ引き返した所で身を寄せる場所もない。びゅうと吹き付ける風に背を押されるようにして勝手に城の扉へ手を掛ければ結局中へ侵入し、「おじゃましまーす」そう広い広い城内で、誰にあてるでもなく声を上げてみようかな。)
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