赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>オウム
(涙を拭ってやろうと触れた肌は体温の高い自分よりも温かかった。淑女に与える口説き文句なら幾らでも知っているけれど、目の前でしゃくりあげる幼い子供を慰める手立てにならない。この小さな女の子はどうすれば泣き止んでくれるんだろうか。半ば無意識のうちに色褪せた記憶の中に朧気に残る母の面影をなぞる、己と同じ色の瞳を持ったひとだった。幼い頃は彼女に頭を撫でられると、それだけで幸せだと思えた。赤い炎に包まれて、顔も声も、思い出せなくなってしまったけれど。追憶から現実へ意識を引き戻したのは、悲痛な泣き声ではなく、力強い羽音。ややあって蒼眼を細めれば、自分より一回りも二回りも小さな頭にそうっと手を伸ばして、転倒した拍子に乱れた金糸を整える様に髪を撫でながら穏やかに「もう大丈夫だぞ」言い聞かせるようで、その実、自分自身にも向けた言葉。ほどなくして現れた住民たちの力を借りて、笑顔を取り戻した少女が去っていく様を立ち上がって見送りながら、肩をすくめて「まさか、子供をあやしたのはさっきが初めてだ」見付けてくれてよかった、と小さく笑って。そうして、ようやく余裕を取り戻して隣に立つ彼の全貌を改めて窺えば、着の身着のまま飛び出したのであろうと容易に想像がつき口許の笑みを深めながら「よっぽど慌てて来たんだな」先程の幼いアリスを相手にしたときのように、寝癖のついた髪を撫でて)ふふ…跳ねてる。
(/お世話になっております。本日も23時前辺りがリミットとなってしまうのですが、もしよろしければお話させていただければと思います。前回のレスにお返事いただいていたので、続きから投下させていただきました。それではご検討のほどを宜しくお願い致します)
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