赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>>悪魔
(明確な答えは彼自身にも存在せぬようで、余所者にはこれ以上何も口出し出来る事は無いだろうと大人しく口を閉じ納得の意を示す為静かに数度頷いて。諭すような物言いと微笑に根負けし、それからは彼の話に相槌を打って耳を傾けるばかり。「取引か……そうだ、これは契約だ」悪魔と契約を交わすなど、仮にそれが良くない事の単なる比喩であっても真っ当に生きた人間なら関わりすらせずに終わるはず。浮いた視点で客観視する己が自らを嘲るように鼻で笑った気がしたが、それでも本心ではどうにも堕ちた人間だと思えないでいた。「頼りに行くことはあっても、男がそう簡単に泣き付くもんかよ」嘘か誠か、本心か負け犬の遠吠えかは本人にすら分からず、ただ契約を結んだ相手として舐められてはなるまいと虚勢を張ってみせた。冗談目化して笑い出す彼に少し拗ねた表情で後頭部をポリ、と掻きながら「馬鹿じゃないアンタなら分かるだろ、この世界に通用する貨幣なんて俺は持ってない」そう答えたところでまたもや新たな気付きを得た。不思議の国と故郷ではコインは共通なのだろうかと。働くにしたって来国初日に直ぐに仕事が決まるなど都合の良い話があるのか。生活を営む上で必要最低限所持していねばならない金の事にまで気が回っておらず、しまったと言うように眉間に皺を寄せて)
……悪魔、俺は誰の金で買い物すりゃ良いんだ。
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