赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>>悪魔
( 約束なんざその場限りの物で、適当に頷かれて後から裏切られるぐらいなら、今の彼が言ったように流して貰える方が此方としてもありがたかった。仮に着飾った衣装が似合っても綺麗だの格好良いだのの褒め言葉は己には不釣り合いなはずだから、と。瞬間的に静まり返った部屋に足を踏み出す音だけが響き、そろりと極端な猫背で姿を見せる。まだ何も言われていないうちから膨れっ面で不機嫌そうな表情を浮かべていたが、誘導されるまま椅子に腰を下ろし身を任せていれば、ここ何年も丁寧に手入れされなかった傷んだ髪を彼は素早く小綺麗な物に仕上げてしまった。振り返った先にある彼の瞳には見違える自分の姿が曲線に歪んで映っている。更に彼が手鏡を開いて見せると、今度は鮮明に色付いて映し出されたその姿に着るもの一つでここまで印象が変わるものかと感心させられる。「やっぱ俺じゃ少し変かな。変だけど多分──嫌いでは、ない」ぼうっと見詰めながら口から零れるように呟いたその言葉に、慌てて首を振り「何でもねぇや」と訂正を入れる。改めて、向き直った悪魔が率先して己の知りたがっていた話題を提示した。椅子に腰掛けたまま数秒の沈黙を置いた後、顔を上げて 連ねて問うのは衝動的に生まれた疑問であり)
──さっきのお客は誰?それから、アンタも言ってた"アリス"って、一体何の事なんだ。俺に何か関係でも?
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