赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>>悪魔
──な、んで。
(迷子の身からすればちっとも楽しくなんてないこの状況を何とも愉快そうに喉を鳴らして笑うその様に、口をへの字に曲げながらじいと目を合わせていた。が、己の決して他人に誇れはしない素性を見事に的中させられれば途端に視線を逸らし泳がせ「なんで分かった?俺何も、一言も、言ってないよな」目線の先は態とらしく奥の薔薇園へ投げられパチパチと不自然に瞬きを繰り返す。一歩後ずさろうとしたところで、天地が逆さになり浮遊感に襲われた。深々と積もる雪の絨毯を下にして倒れ込んだ己に覆い被さる悪魔の顔が気が付けば至近距離にあり、抵抗する間もなく今度は唇に口付けが落とされる。薄い生地で縫い合わせただけのちゃちな囚人服では少し触れただけで体温で雪が解けて背中に冷水が染み込むのを感じる。初めて味わう感触に躊躇なく口付けは深くなり、彼が雪を理由にして身体を離すまで停止していた思考回路の詰まりが取れたように寒さ故か微かに震える手で彼の掌を掴み体制を起こすと乱れた呼吸を整え、呆然とした表情のまま手の甲で口元を抑え。喉に突っ変えて出て来ない言葉が声になって発せられたのは彼が爪先を城の方角へ向けた時だった。恐怖とはまた違う、訳の分からない感覚に襲われ混乱した頭のまま、しかし先程乗ったゲームとやらを有利に進めるにあたって、悪魔がこのような身体的接触を快楽とするならばこれを逃す手はないと、相変わらず視線は逸らしたまま問うて)
──俺みたいな男と、こんなことしてアンタは楽しいのかよ。俺は、これからアンタを満足させるために、こうするのが正解だって?
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