赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>蜥蜴のビル
(何の気なしに聞いた質問、故にその答えは直ぐに返ってくるとばかりに思っていたが、次第に深くなる眉間の皺と唸り声に悪い質問だったかと眉を下げ。だが悩む彼には申し訳ない話だが、その様子にほんの少し嬉しさを感じてしまったのも事実であり。心底悩むくらいであれば"知らん"と突っぱねてしまいそうであるのに、きちんと解答を出そうとしてくれる所に何だか懐に入り込めているようで安堵してしまったのである。思わず緩む口角のままふんふんとその答えを聞いて思い出したのはいつかの早朝。「あ、そーだよね。ビルちゃん朝にリスちゃんにクルミ上げてたもんね、好きなはずだよ!」人差し指を立て、思い出したとばかりに笑みを咲かせば納得だと何度も頷いて。仕事が好き、ごはんによく連れて行ってくれる、すぐに舌を出す。大好きな相手とはいえ案外知っていることは少なく、新たに得た情報は些細なことでも嬉しいもの。今日二つ目のプレゼントだとしっかり記憶に刻み込み、話を向けられれば何でも話しますぜといった勢いで口を開いて。「オリバー?オリバーはね、たべることが好き!前はしんどかったけど今はとっても楽しくてね、だから好きなの!あとはダディとマミーとナンシー、妹なんだけど、かぞくが好き!他にはね、えっと。んー、と。」とはいえその勢いも次第に衰え、二つ挙げた時点で口篭る事となり。嫌なこと、嫌いなこと、それらは沢山挙げられる筈なのにどうしてだか好きなものは挙がらない。薄っぺらな自身を写しているかのようだが、そんな事には気付かない。そのまま黙り込んで暫くの後、ぱっと顔を輝かせれば「おもしろいもの!おもしろいものが好き!見たことないものとか、キレイなものとか、そーゆーのが好き!」なんてあまりにも抽象的な、然し長い病院暮らしならではの本音が挙げられようか。「でもむずかしーね。好きなもの言うのって。ビルちゃんすぐ言わないからへんなのって思ったけど、オリバーもだったや」くしゃりと苦笑に目を細めれば、直ぐにそれを挽回するようにはい!と勇ましく手をあげて「好きな人ならいるよ!じょーおーさまとビルちゃん!」なんて軽やかな笑いと共に言おうか。)
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