xxx 2018-06-03 19:25:29 |
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>18 夏目 央
大人に手を焼かせるのは、子供に与えられた立派な特権なの。あたくしにとって、この館へ招かれる死にたがり達はひとり残らず皆、あたくしの可愛い子供達。遠慮はいらなくってよ。
(苦笑いの彼女とは対照的に、手を焼かされる事態を憂慮する素振りなど微塵も見せずに寧ろ楽しげな様子だった。彼女の瞳に宿るダークブラウンを真っ直ぐに覗き込みながら、そっと伸ばした掌で優しく頭を撫でてやる。それは子供扱いでも単なる戯れでもなく、明確な愛情の表現。思いの他順調に弾む会話を楽しむ内、気付けば目的地へと辿り着いていたらしい。彼女の頭から離れたその手は、目の前にある扉の金のドアノブを握って回す。扉の向こう側に広がっていたのは、何とも不思議な空間だった。一見するとそこは、満天の星空。黒に深い青を溶かし込んだ様な滑らかな夜空の色彩に、数え切れぬ程の小さな星の瞬きが鏤められている。所々、一際強い光を放つ星の存在も見て取れ、きっとそれらを線で繋げば夜空に輝く星座の形を成すのだろう。床も天井も、部屋の奥行すらも分からない。ただ何処までも続く無限の宇宙を思わせるその不思議な空間に躊躇わず足を踏み入れつつ、彼女にも入室を促すようにくいくいと手を動かして)
お礼の品――素敵ね。あなたがあの子へ素敵な贈り物を用意出来るように、あたくしが力を貸してあげましょう。
(部屋の入り口から少し進んだ場所、大凡この部屋の中心と呼べる位置に置かれたテーブルの傍へと歩み寄りながらそう告げる。途中、何かを呼びつけるように右手を軽く振る様な仕草。見えない力に引き寄せられているのか、何処からからティーポットにティーカップ、ソーサー、そして焼き菓子がいっぱいに詰め込まれたバスケットがふわふわと漂ってきた。さあ、果たしてこれらの光景は彼女にとって"マトモ"と言えるのかどうか――答えの分かりきった質問を敢えて投げかける事はなく、ただちらりと彼女を振り返りながら微笑みかけるに留めて)
さあ、どうかしら。ご想像にお任せするわ。――さあ、座って頂戴。直ぐにお茶が入るわ。
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