助手 2018-05-23 21:25:11 |
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っ…
(ジョン、というその言葉さえ出なかった。声をかけられゆっくり振り返った先にあったのは『外面のジョン』愛想を振り撒き自分を偽りでも本当はもっと求められたいと願うジョン。数歩で触れられる距離にいるのにそこまでが随分と遠い。これでは同じだ、先程まで散々非難していたジョンをアクセサリーとしか考えない女たちとなんら変わらない。都合が悪くなったら繋がりを簡単に断つ、彼女らと自分とになんの違いがあるのだろうか。ジョンから目を反らしたことで再び機能しだした観察力がジョンの心境を浮き彫りにさせる。失望、落胆、幻滅、傷心、悲壮…次々にジョンの顔の回りにそんな言葉が浮かんでは消える。その中心に浮かぶ「君も、僕を認めてはくれない」という言葉)
…違う
(思わず口をついてでる。体が震えて喉が無性に乾く、ぼやけた視界が談話室の扉に手をかけるジョンを捉える。この部屋を出たらきっと今までの生活が待っている、それは先ほどまでのシャーロックが望んだものだった。だが頭の中で何度も先ほどのキスがよぎる、『依存しろ』というジョンがよぎる。あんな想いを抱く相手は初めてだ、あんなことを言う人間も初めてだ、その相手が誰でもないかけがえのないジョン・ワトソンだ。気がついた時にはジョンのもとに無様に駆け寄っていた。そして扉にかけた手を止めるために自分の手をそこに重ね、もう一方の手を後ろからジョンの体に回して抱き寄せる。いつの間にか声は震えて目は潤んでいた)
違うんだ、ジョン…僕が認められないのは僕なんだ。君に落ちて、落ちて……元の僕に二度と戻れなくなるのが、怖いんだ…そんな僕、僕と認められない。このままじゃ、ジョン…僕は君の理想の僕じゃなくなるかもしれない。推理もできない事件も解決できない僕になるかもしれない、君しか考えられなくなるから。ジョン、でも、僕は…ジョン……僕は…君がもし許してくれるなら…ジョン、君と一緒に落ちたい…
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