助手 2018-05-23 21:25:11 |
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…それは残念だな、僕の心の穴を君が埋めてくれるのかと思ったんだけど。…さて、そろそろ寝ようかな、先に部屋に戻ってるよ。おやすみ、シャーロック。
(相手が不意に我に返ったように口元を覆うのを見て緩慢な動作で首を傾げる。残念だ、と言いながらも怒ることも悲しむこともなく、にこりと爽やかな笑みを見せただけ。しかしそれが、彼がいつも用意している外用の笑顔だと言うことくらい、探偵なら一瞬で見抜くだろう。無かったことにする、その言葉で酔いに任せて相手に向けて大きく開いていた心の扉が再び閉じ、いつも女性や患者たちに見せる笑顔を無意識に彼にも向けた。それは一種の自己防衛、自分を認めてもらう為に無意識に出てしまう笑顔だ。その笑顔もやがてすぐに普段彼に見せている表情へと変わり、何事もなかったかのように小さく欠伸をするとそのまま立ち上がる。足元が覚束ないほどでは無いが、若干視界が揺らめいた気がした。部屋まで運べ、君のせいで酔った、と普段ならワガママを言う所だっただろうか。彼が自分への気持ちから目を逸らした時、それを拒絶と受け取ってしまったのはいつもの女性たちに感じていたものと似た感情。──「君も、僕を認めてはくれない」。それを表に出すことはなく、第一表に出さずとも彼には前々から気付かれていたのかもしれないが、せめて嫌われないようにと彼女と別れる時はその思いを隠し普段通りを装って優しく笑う。自分が傷付いているという事実さえひた隠しにして。彼に向けたのは、そんな笑顔だった。明日になれば忘れる、と彼は言ったが到底そんな気はしない。酔っぱらいは自分は酔っていないと言い切るのが常だけれど、本当に今は酔っていないと思っていた。おやすみ、と声を掛けながら談話室の扉に手を掛けて)
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