悪魔 2018-05-21 14:45:41 |
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ははっ、悪魔の加護を受けてる神父なんてこの世に俺だけだろうな。あの薔薇か?肌身離さず持ってるけど…
(遠ざかる鐘の音の中で目元を舐められるとくすぐったそうに笑い、グレルの頭を軽く撫でてやる。人間を脅かそうとしていた上級悪魔を完全に猫扱いなのだが、反射的にやってしまうのだから仕方がない。怒られないのだからグレルも問題ないのだろうとポジティブに捉えていた。降り注ぐ黒い羽のバックに純白の壁、そのさらに上に黄金の鐘とは、ずっと一人で暮らしていれば一生出会わなかった光景だろう。満足げにその風景を眺めたあと、バスケットを再び手にとったところで黒い薔薇のことを聞かれて胸元から服の中に手を入れて薔薇を取り出した。肌身離さず持ち歩けるようにと神父用の服、祓魔師用の服、寝間着とそれぞれに薔薇をさせるポケットをつくり着替えの度に移しているのだ。なぜそんなことを聞くのかと問う前に『厄介な気配』という単語を聞いて眉をピクリと動かす。瞬時に神父時の優しい顔から祓魔師の顔へと切り替わり無意識のうちに武器を確認した。神父服では武器を隠しきれず投げナイフが数本腰に刺さっているだけの軽装備だ。昼間なのに厄介な気配とはどういうことだろうか。悪魔は夜にしか出ないと思っていたが、悪魔のグレルが言うのだから不吉な何かが街に迫っていることは間違いない。「急ぎましょう」と言う言葉に「あぁ」と短く答えると表向きの表情だけは神父のそれへと戻してグレルに促されるまま少し早足で町へと向かった。そんな折にグレルがはっきりとした殺意を隠しているなど気づきもせず何も起こらないことをただ神へと祈っていた)
おはよう、ヘクター。こら、早くお母さんの手伝いに行ってこい。おはようヴェール、これから洗濯か?終わった後にちゃんと手にクリームを塗っておけよ
(鐘の音で目覚めた街へと出かけると朝の仕事を始める人々がちらほらと出始めている。街を歩いてれば知り合いの子供たちが朝の挨拶をいいに来て、それらひとつひとつに応えて挨拶を返しながらもいつもより少し足早に街を歩いていく。グレルの言う厄介な気配とはどこにいるのだろうか。心の奥底に緊張感をはりつめながら街を歩いていって)
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