悪魔 2018-05-21 14:45:41 |
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悪いな、俺は信念を曲げられない性質なんだ
(真っ暗闇の中での5分間はいつもよりも倍長い時間のように思えた。だんだんと暗闇に目が慣れてきて相手の姿も分かるようになってきたが、一向に動こうとする気配がない。何を考えているのか不安に陥りそうになるのを必死に持ちこたえながら悪魔の動きをうかがっていると、突如悪魔はナイフを掴んでくる。だがそれで動揺しないほどにはザックも場数を踏んでおり、刃が動く気配はない。だが悪魔はまたも予想外の行動にでた。ナイフの刃を掴み自らを傷つけたのである。続けられた言葉はもっと驚くべき予想外の言葉だった)
お前が…街の人を守るのか?誰の魂も喰わずに?悪魔は魂が食事なんじゃ…
(今まで人を襲う立場だった悪魔が、正反対の行為、街を守るのだという。裏のある声色でもないし、隠された真意があるような言葉でもない。グレルに敵意を向けていたザックだったが、一気に緊張感が抜けまた頭は混乱しはじめる。目の前の悪魔、グレルはザックに一目惚れをし求婚までするほど惚れ込んでいる。そのグレルが魂の断食宣言をしているのだ…ザックのそばにいるために。二人の間に白い薔薇が取り出され、グレルの血によってそれが赤黒く染まっていく。その意味をザックは知らなかったが、これが普通は行わない誓いであるということはなんとなく想像ができた。薔薇に目を奪われていると、羽が開かれようやく暗闇から抜け出す。再び蝋燭が淡く周囲を照らす教会でグレルと対峙することになった。先ほどと場所は変わらず目の前にあるのは同じ赤い瞳なのに、なぜか今はその赤色に吸い込まれそうな感覚に陥っていた)
…
(グレルは今後この街を襲うことはなく、さらには自分も含め守るという。神父であり祓魔師である自分の願いはこの街の人々がただ平和に暮らすこと、先ほどの誓いをグレルと交わせば街の人達を守るという責務は果たされる。人々が悪魔に襲われること自体がなくなるのだから夜は今よりももっと安全になるだろう。祓魔師として利点しかない。だがそんな祓魔師としての想いよりも、今はザック自身の想いとして、この薔薇を受けとりたいと思っていた。グレルは一人の人間に対して多くのものをなげうって側にいたいと、ただそれだけを願っている。そんな酷く純粋な願いを受け取ってやりたいと思ったのだ。それにこんな悲しげに懇願されては断れないというものだ)
ザック・カーチスだ。お前の誓い、確かに受け取った。この誓いを守ってくれるなら側にいても良い
(薔薇を受け取りながら名前を名乗る。いつまでも神父様では他人行儀というものだ。赤黒く染まった薔薇をしばし眺めたあと軽く薔薇に口づけ「なんてな?」といいつつ悪戯っぽく笑う。これで少しはグレルの表情が明るくなるだろうか)
それで、側にいるっていうのは夜の間ってことでいいのか?悪魔は夜にしか街には来ないだろ?あと…いつまでこの距離でいる?
(悪魔が現れるのは決まって夜だ、夜にしか人間の世界にしかいられないのはザックも薄々知っている。ついでに未だ腰に手を回されたままピタリとくっついているグレルを見下ろし軽く首を傾げる。このままでは体の自由が効かないし、そろそろ離してもらおうかとザックは考えていた)
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