xxx 2017-12-05 23:46:58 |
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(丁寧に下げられた頭、流れる様に無駄の無い動作は一流の者だけが身に付けられる洗練されたマナー。よもや斯様な場所で受けると思わなかった歓迎の言葉に呆気に取られたのは最初のうちだけ。持ち前の適応力の高さを発揮し、冷静に彼の言葉を分析し始め。掲げられた羊皮紙にナニが記されているのか、名乗ってもいない自身の名を言い当てられ'死にたがり'と看破された事に瞳の奥は焼け付く様な熱を孕む。カッと激情に身を任せるばかりの若い世代はとうに乗り越えた、ぐっと燃え盛る熱を腹底に沈め、今は少しでも多く情報を引き摺り出す時だ、と出し掛けた手は引っ込めた。得体の知れぬ相手だからこそ慎重になるべきだ、コクリと唾を飲み込み、己へと言い聞かせて。なんの警戒もなく詰められた距離に無意識の内に一歩後退り、パーソナルスペースを確保しては、品定めする様な視線から目を逸らさず、同じく言葉の裏にある真意を探ろうとじっと焦点を黒めに当てる。ふ、と違和感を覚えたのは丁度その時。何かが可笑しい。眇めた瞳で違和感の正体を探ろうと注視していると不意に気付いた。彼は瞬きをしていない。普通のニンゲンならば生理的に有り得ない現象。っ、と息を飲む音が妙に耳につく。述べられた内容も俄かには信じ難い。乾いた唇を舌で潤し、一つ一つ疑問を消化するべく口を開いて。)
俺の名前を知っている事と、死にたがり、と称した事から少なくとも俺の事情は其方さんには筒抜けの様だ。一つ、此処がそのマダム・ノワール氏の持つ館という事は理解した。理解はしたが…、もう一度問う、此処はドコなんだ?あぁ、それともう一つ。…まるで深淵の如き綺麗な瞳だな。お前、ナニモノだ?
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