響きあう物語

久美子のわがままならばいくらでも聞くわよ……（寂しそうに微笑んで久美子のわがままならば聞こうと思って
ええ、サンフェスを必ず成功させましょう……（指を絡み合わせた手を決意を表すように手を握り締めて

がんばろうね
（にっこり微笑んで
名残り惜しそうにつないでいた手を離して）
じゃあ、またあした

……麗奈、大好きだよ
（そっと、頬にキスをして
踵を返して小走りに走りながら、後ろを振り返って小さく手を振って）

ええ、また明日……
私も久美子の事が好きよ……（名残惜しそうに久美子の手を離すと軽く右手を振り愛おしそうに久美子を見つめて久美子を見送り

（１週間ほど、部のパート練やクラスの用事でお互い忙しく教室以外ではあまり話す機会がなくて
今日は３年が進路相談でいないこともありいつもより早めに部活が終わって）
麗奈、まだいるかなぁ？
（パート練を終えて、楽器を抱えて音楽教室に戻ってきて）

……（あれから1週間過ぎて練習が終わると音楽室で帰る準備を黙って黙々としていて内心久美子が来るのを待っていて

（教室のドアを開けて中をぐるりと見渡して
数人いる部員の中に、ひときわ目立つ綺麗な長い黒髪を見つけると気分が高揚するのを感じて）
麗奈、お疲れ～
そっちはパート練、終わった？

お疲れ、久美子……
ええ、パート練は、終わったわ……（久美子に話しかけられると内心嬉しけれどもその心を隠して素っ気なく答えて

そ
……え～っと
このあとなんか用事、ある？
（視線をななめ上に逸らせながら
歯切れ悪そうに、少し遠慮がちにたずねて）

そうね……今日もいつもの丘で演奏しようと思っているわ……
久美子も一緒に行く……？（トランペットの入ったケースと鞄を持つと久美子の方を向いて一緒に行くのか質問をして

……分かった、付き合うよ
（いつもならイヤそうな顔をするのが常だけれど、今日は少し思い詰めた様子で素直に頷いて）
じゃあ、早く行こう
（楽器ケースを重そうに担いでカバンを持って）

ええ、行きましょう……
久美子、ユーフォニアムを持つわ……（小さく頷いて久美子に返事をすると久美子からユーフォニアムの入ったケースを持とうとして

いいよ
途中でバテたら代わってよ
早く行こ
遅くなると困るからさ
（麗奈の手をとって、ふたりで教室を出て）

ええ、解ったわ……（久美子と手を繋いで教室から出るといつもの丘に向かい
ところで久美子、大丈夫……？
教室で何か考え事をしているみたいだったから……（丘に向かいながら心配そうに久美子を見つめて

（ちょっとびっくりしたように麗奈をじっと見返して）
……
とりあえず、演奏を聴いてほしいの
それで麗奈がどう感じたか、教えてほしい
（言いかけた言葉をのみこんで
別のことを言いながら、前を向いて）

解ったわ……丘に着いたら久美子の演奏を聞いてあげる……演奏は、自分の心を写す鏡だもね……（小さく頷いて久美子の演奏を後で聞くこと伝えると丘に向かって歩いて

さすが麗奈
難しいことを言うね
（くすっと小さく笑って）
だとしたら、麗奈の心は世界でいちばん……
は、言い過ぎか
かなり綺麗、なはずなんだけれどぉ～？
（じとー、っと横目で見て）

そんな事は、ないわよ。
私は、嫉妬深いし腹黒し褒められた人間でないわよ……（軽く首を横に振り苦笑いを浮かべて立派な人間では、ないことを伝えて
それに私は、かなりエロいわよ……（悪戯ぽく微笑んで最後に言葉を付け加えて

全部知ってる
（こちらも苦笑いしながら全肯定して）
演奏が心を映す鏡なんだとしたら
麗奈の音はなんであんなに人を惹き付けて心を揺さぶるの？
（胸に手をあてて、麗奈の音を思い出すとそれだけできゅんとなるのを感じて）

それは、解らないわよ……
ただ私は、特別になりたくて心が震える演奏がしたくて自分の感情を演奏にぶつけているだけよ……（自分の演奏をしている時の事を思い出して演奏の時にしている事を久美子に伝えて

ふーん……
結局、心なんて関係なくて
才能と積み上げてきたものの差なのかなぁ
（前を向いて
額に汗を浮かべて息をきらせながら、麗奈に遅れないように坂道を歩いて）