遠野 千尋 2017-09-16 18:35:11 |
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(声を震わせて話し出す相手に小さく肩を揺らすも抱き締めたまま顔は上げないようにして。多分顔を見ないほうが話しやすいと思ったから。弱った相手の声は時折見せる寂しげで儚げな表情を彷彿とさせて胸の奥がキュッと締め付けられるも最後まで静かに話を聞いて。ずっと一人暮らしで母親の話をすると少し切なげな表情を見せていたから何かあるのだろうと思っていたがその境遇は壮絶なもの。自分も母親と一緒に食事をしたのは数えられる程でコンビニやスーパーの惣菜、自己管理が出来るようになってからはお金が置かれることが増えて一人で食べてきたが、そこに愛があると感じるのと感じないとでは天と地の差がある。無償の愛を与えてくれるはずの人から拒絶された時の相手の心の痛みは計り知れない。自分が今感じている胸の痛みなんてちっぽけなものに過ぎないが、自分の答えは変わらなくて。相手の問い掛けに胸に詰まった息を飲み込んで静かに息を整えてから相手の肩に手を添えて少し身を離すと顔を向かい合わせ「いいよ。愛してるって言って良い。俺に限らずに遠野には誰かを愛する権利はちゃんとある。それに愛し方が分からないって言うけど遠野はもうしっかり人のこと愛せてるよ。学校でも生徒の為に色々考えて授業してくれて話もちゃんと聞いてくれる。俺の事も、ちょっと柄悪いから他の先生に目ぇ付けられた時もあんただけは俺を信じてくれた。おにぎりとか料理の仕方も教えてくれたし、仮付きだけどデートだってしてくれた。そう言うのも全部、俺は人を想う愛がないと出来ないことだと思う。だから遠野はちゃんと人を愛する心を持ってる。」相手の目を真っ直ぐに見つめて迷うことなく告げるも少し照れくさくなっては後ろ髪を掻いて「…って俺なんて人生経験浅いし偉そうなこと言えないんだけどさ。それに心から好きって思ったのは遠野だけだし。」と苦笑混じりに言うも再び相手と視線を合わせると相手の頬に手を添えて「俺、やっぱり遠野が好き。…俺も遠野とずっと一緒にいたい。誰よりも近くに傍に居て支えたい。不安なら不安なままで良い。あんたが不安な分、俺があんたを好きでいる。…遠野、今まで一人でずっと耐えて頑張ってきたんだよな。これからはあんたが背負ってきたもの俺にも一緒に背負わせて、支えさせて欲しい。」想いが溢れて時折息が詰まって声を震わせながら気持ちを告げると偉そうに聞こえてないか不安に思いながら頬から手を離して相手の頭を優しく撫でると少し泣きそうになりながら微笑んで。)
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