松野カラ松 2017-05-08 21:20:17 |
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>カラ松
―――何で、俺、あんな。(弟をひとり残して、駆け込んだ廃れた公園。おざなりにぽつりぽつりと建てられた外灯に照らされる薄暗い敷地内に荒い呼吸のまま踏み込むと、目当ての水飲み場に。錆びた水道の蛇口を力任せに捻り冷たい流水を掌で受けながらも、脳内を占めるのは自責と後悔の念ばかり。いっそのこと笑い飛ばすなり、彼の発言を揶揄るなりして冗談で流してしまえば良かったものを、取り繕い切れなかった結果がこの有り様。両の手に掬った真水で顔を洗うこと数回、初夏用の薄手のパーカーの裾をたくしあげ、滴る水滴を拭いながら己の言動を改めて顧みて。独特のファッションセンスを披露されることも多々あるが感受性の強い弟のやわい心を深く抉ってしまったであろう一幕。際限りなく押し寄せてくる罪悪感に心臓がキュウと音を立てて軋み、痛みを堪える様に瞳を伏せるも、直ぐに表情を引き締めて顔を上げて踵を返して。離れる間際に人通りの有無は確認したものの、ケーキ種である弟を夜道に一人残しておくのは危険極まりない。公園を出てひた走り、やがて見慣れた青色を視界に捉え、安堵の色を浮かべながら弟の名を呼ぶと、そちらに駆け寄ろうかと)……カラ松!
>チョロ松
!…へへっ、さっすが俺のチョロ松ぅ〜!(後先考えずに手当たり次第に食材を詰め込んだ冷蔵庫はスペースを押し潰されて明らかなキャパオーバー。足元に未だ残したままのもう一袋分の食材はどうしようかと首を捻ったところで、苦言と共に脇から伸びた掌に瞠目。ぱちぱちと双眸を瞬かせ隣を見やれば、への字口であれやこれやと尤もな理由を並び立てながら庫内の整理を手伝う三男の姿。兄である己への扱いがちょっぴり雑なこともあるが基本的には面倒見のいい彼のことだ、どうやら心配して様子を窺いに来てくれたのだろう。手際よく収納されていく食材と弟の手付きを眺める内、じわじわと胸に暖かな気持ちが溢れ出し自然と口端が緩む。感極まって隣に立つ弟に両手を伸ばして、その体躯をぎゅうっと腕の中に抱き締め。スーツに皺がつくから止めろと怒られるのが先か、調子のいい発言に対するツッコミが先か、あるいは邪魔をするなと一蹴されるか。そんな些細なことなど気にも留めずに、嬉しそうに締まりのない笑みを零して)―――ありがと。
>十四松
はいはい、んじゃ、失礼しまーす。(大人しく正面に座す弟から漂う優美な香りに眉値を寄せたのは一瞬、先を急く彼の言葉にくすと笑み、消毒液をひたひたに染み込ませたコットンで患部を撫ぜるように柔く叩く。自分の怪我は勿論のこと、兄弟たちの怪我の手当ても他の弟たちに任せっきりであった為に救急箱に触れること自体が久しく、こうして弟の怪我の手当てをするのは初めてに等しい。らしくもなく、妙に慎重になる手付きに緊張しているのだと合点がつき口許に緩く浮かべた笑みに苦みが滲む。役目を果たした脱脂綿を小さなビニール袋に入れ、甘い香りを封じるべく袋の口を縛ると、部屋の隅の屑入れに放り。堅く目を瞑る弟の黒髪を一撫で、続いて取り出したガーゼを患部に宛がい、畳の上に転がした医療テープを逆手で拾い上げるも、片手が塞がった状態では上手くテープを切れないと判断を下し、弟にガーゼを押さえておくよう指示を)――ん、消毒はこれでおしまい。よく頑張ったな。あ、テープ貼りてぇからちょっとこれ押さえといてくれる?
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