赤の女王 2017-02-13 17:46:29 |
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>帽子屋
(女性のような風貌でも一応は男性であるからか、歩み寄ってくるその顔には苦悶や怒りの表情ではなくいつもの凛とした笑みだけが浮かんでいて。少しばかり悔しいけれどその強かさが帽子屋という人物を作り上げているのだろう、不思議と苛つきはせずニンマリ不敵な笑みを受けて立ち、ひとまず根比べより先に家選びだと開いた扉にするりと体を滑り込ませて。城ほどではないにせよ、民家の形を取っている分普通の家よりどれほど広いか実感としてわかる屋敷を棒立ちで仰ぎ「でっけぇー…」と素直な感想を零しながらあっちへこっちへ示されるまま首を動かし、顔に似合わずやたら汚れた三月兎の部屋。主はまだ中庭で眠っているのかがらんとした眠り鼠の部屋。そして髪を撫でられる事にも気付かないほど心を奪われる極彩のアトリエを見開いた瞳に映し「すっげぇ…!」呟いた時にはもう爛々と輝く悪戯っ子の笑顔を浮かべ、背を押された途端バタバタと廊下の隅まで駆け出して。空き部屋も人の部屋も見境なく飛び込んでは「へーぇ、あの兎男絵描きだったのか。変な絵ばっか描いてやんの……で、こっちがお前の作った奴だろ?あっちもこっちも女の服ばっか。俺も王様アリスになったらこんなフリフリ着なきゃなんねぇのかな、なぁ?」各々の部屋を飾る華やかな作品達に見惚れ、見惚れたが故に嬉々として茶化して回り。整然とした城の装いに比べればここは面白いものが多すぎる。ひとしきり冷やかして、頭に気に入った帽子を2つ3つ乗せたはしゃいだ格好で戻ってくればふうっと満足げに息を整えるが「――よし決めた。今日の部屋はお前の隣。明日は鼠、その次は兎の隣が俺の部屋。こっからそこまで今日から皆俺の部屋、これで決まりだ」ここからここまで、と大きく腕を広げて告げたのは空き部屋全てかっさらいたいという我が儘。こんなに愉快な部屋を一つしか選べないなんて勿体ない、と我ながら冴えた妙案にニッコリ八重歯を見せて)
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