赤の女王 2017-02-13 17:46:29 |
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>女王陛下
(その女性から発せられた「アリス」という呼び名は、有無を言わせないような、それでいて穏やかで優しい響きを持っていて。ごく、と喉を鳴らし息を呑むと、ほんの数秒の緊張感に手を握り。それからこの世の全てを許してしまうような微笑みを浮かべるのを見ればホッと体の力を抜き、労いの言葉にゆるゆると首を横に振り。「いいえ、女王陛下。彼は私が退屈しないように、迷わないようにしっかりと道案内をしてくれました。元の世界――アチラのお医者様もあれくらいお話上手なら、診察の時間も楽しく過ごせると思うんだけど」話している途中で、長い時間を過ごした筈の向こう側が自分にとってすっかり過去形になっている事に気が付くと一瞬口篭り。けれど、直ぐに元の微笑みを携えると困ったように肩を竦める仕草をしながら冗談を続けて。「女王陛下候補の、ひとり……?」女王陛下へ御挨拶を、とは言っていたけれど、自分が次期候補だなんて欠片も聞いていない。それについて尋ねようとしたけれど、淡々とした口振りに水を差す間は無く、ぽつりと呟いた言葉は宙へ消えて。「自由、なのね。チェシャ猫と同じで」説明を聞き終えてから頭に浮かんだ言葉は扉の前で尻尾を揺らしているであろう紫の猫を彷彿とさせて、口元を手で隠しながらクスリと笑い。「――私を呼んだのは、女王陛下、貴女なんですか?」此所へ来る前に聞こえた声の響き。今になってそれが目の前に居る優しい女性のものに酷似していることに気が付くと、はっと顔を上げて尋ね)
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