赤の女王 2017-02-13 17:46:29 |
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>三月兎さん
(真っ赤な薔薇は今日も手の中でその美しい花弁を風に揺らしていた。また傷を作って薔薇に余計な赤を付けてしまわぬよう、慎重に棘のない部分をそっと持つ。反対の手で髪を耳に掛けようとして漸く気付く違和感。普段は下ろしたままでいた癖の付いた髪は今も深紅のリボンで纏められ、もう薔薇に絡まる心配も必要ないだろう。不思議なことに枯れる気配のないその薔薇を見る度、思い出すのはリボンを渡してくれた彼のこと。言葉に込められた意味を深く考えることもなくその通りだと納得し、言われるがまま結んだそれが時折揺れ視界にちらちらと映った。しかし後から考えてみると、この素敵な薔薇の美しさが保たれるようにと気遣ってくれたにも関わらず、未だお礼を言えずにいることが心残りで。「ここに居れば、また会えるかしら」庭園の片隅で何時会えるかも分からない相手を待ち続ける。しかしそれも苦ではなく、ぽつんと座る姿からは想像も付かないが、これ程見事な薔薇園を見る機会など精神病棟に閉じこもったままでは得られなかっただろうとこの光景を堪能していた。そんな中、ふと遠くに見えた一人の影。もしかしたら。その人がそうだと決まった訳でもないが、淡い期待を抱きながら駆け寄れば其処にいたのは探していた人物で。そのまま逆方向へ立ち去ってしまいそうな相手に近付き、絵具の色が付いた白衣の裾を思わず掴む。「あの、あ…待って!」口から溢れ出たのは自分でも想像していなかった大きな声、出した本人も驚いているらしく瞳をぱちりと瞬かせて)
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