重力と包帯と　/　非

無害な太宰ってのも気色悪ィな…。
( 序でに酒の肴も一緒に籠に放り込んでから会計を済ませると、何時に無く物静かな相手を訝しんで袋片手に振り返り、無意識の内に僅かに眉尻を下げて見上げ乍ら呟いて。普段の嫌がらせや軽口が無い分此方も怒鳴る事に労力を割かずに済むものの、先刻のらしからぬ発言同様普段と様子の違う相手が如何にも気に掛かり。思えば顔を合わせてから未だ一つの悪口すら言われていない。喜ばしい筈なのに調子を狂わされている今の自分が、まるで何時もの相手を恋しがっているかの様だと気付けば、黙って視線を外し店の出口へと向かって )

…辛辣な態度をお望みかい？
( 実に有意義な時間だ─、自分の知らない世界が真逆食料品に或るとは。…今度皆に手土産として買っていこうか。と、大体の目星を付ければ、思い描くのは矢張り探偵社の皆で。其ればかりに気が向いて、何処か上の空だった自分が急に引き戻されたのは相手の呟いた一言。此の後も暫くは一緒に過ごす(初めからその心算だった)のだから、余り調戯うのも失礼か─なんて、考えてた自分が少し莫迦らしくなる。が、其れも相手らしいか。なんて結論付ければ、口角を少し吊り上げ上記を述べ「物好きな元相棒も居たもんだね」なんて皮肉を零し )

他人に迷惑掛けるのが生き甲斐みてぇな奴が大人しかったら、警戒すんのは当たり前だろうが。
( 大嫌いな自分に対しても穏やかに接する事が出来るようになった挙句“元”相棒呼ばわり、そんな変わって仕舞った相手の言動の端々に寂しさにも似た感情を覚える自分に苛立ちが募れば、不機嫌さを隠しもせずに一つ舌打ちを零し吐き捨てて。道なりに歩みを進めて辿り着いた所謂タワーマンションの前で足を止めると、慣れた手付きでオートロックを解除しコンシェルジュの常駐するフロント前を通ってホールへと抜け、袋を持っていない方の手で昇降機を呼ぶボタンを押し )