あああ 2016-03-27 01:20:07 ID:90fbf01fd |
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「あなた。」
梓は背中側へゆっくりと体を傾けると、そのまま静かにブリッジ姿勢を経て静かに立ち上がり、卓郎へ歩み寄った。
「ぬう……わざわざ逆立ちを解く余裕とは、流石に長たる者と言うべきか……。」
校長は明らかに見下された行動に憤慨、しかしある種の畏敬を込めて呟いた。いつからかそう呼ばれている一族の拳「乱鞭脚(らんべんきゃく)」は、常に逆立ちであるのが基本の姿勢である。ゆえにその構えを解くことは大変に危険な行為ではあるが、「親」たる梓は躊躇なくそうした。礼節を重んじた行為であると共に、「直立してなお最強である」という彼女の自信と矜持、そして常人への嘲りであった。
「いい目をしているわ。とても……生気に満ちていて。それに挑戦的。面白いわ。あなたの実力、いつか見られるといいのだけれど……。」
艶かしく卓郎の顔を見つめながら、一応の評価を下す。もっとも、最後の一言にやはり支配者の傲岸さが滲んでいるのだが。
「見られるさ。腰抜かすなよ。」
卓郎は背筋が凍りつくような感覚を覚えながらも、気丈に挑発する。
「勿論、その時が来たなら……この世でもっとも愚かな男の亡骸が残るだけ。私は何を怯えることがあるのかしら。」
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