天ノ河 玉藻 2016-02-02 01:54:26 |
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「だっ、誰が気に入ってなんか……!」
「ふーん、どーだか」
シャミは軽く腕を組んで微笑みながら、からかうような目線をこちらに向けてくる。
……不幸になればいいのに。
そう言い出しそうになって、ギリギリ言葉を飲み込む。
代わりに僕は、そっぽを向いて徹底反抗する姿勢を見せた。
「何さ、自分が勝手に着せたクセに。それに加えてからかうなんて、酷いじゃないか!」
「あら。何を言うのかしら、ディラ?アンタだって男なら本気出せば逃げることだってできたでしょうにねぇ?」
言い返すも、更に追い討ちを掛けられる。
もうこうなったら言葉なんて選んでられるか!
「逃げたところで普通に捕まるしっ!!しかもそのあと絶対に『お仕置きが必要ねぇ?』とか言ってこちょこちょとかするでしょ!?やめてって言っても問答無用でッ!!それが怖いからこういう状況にならないように事前に逃げてるんだよ!?予防だよ予防!そもそもシャミはどうして毎回毎回突然変なことを僕にするの!?もうちょっと手加減とか情けとか掛けてくれてもいいんじゃないかにゃああぁぁ!?あひゃひひ!ひははははは!?!?や、やめっ!ひははっ!はっ!?はふひひひひっ!!いひひひひぃッ!?」
文句の塊を吐き出すも、結果はこれ。
迂闊だった。
シャミに背を向けて文句を言っていると、いつの間にか背後に近付いてきていたらしいシャミにこちょこちょをされてしまった。
もう、どうしようもない。きっとしばらくは解放して貰えないだろう……。
「そんなこと言う子には、やっぱりお仕置きが必要よね!さぁ存分に私の華麗なるくすぐり技を食らいなさいっ!」
「あっははッ!?いひひひひひひひ!ひぁぁはははははは!?くふふふっ!も……やめぇぇえっへへへひひひ!?ひゃみぃぃ!もうひゃめてぇぇぇぇはははひひひッ!?」
最早笑うことしかできない。
涙で視界が霞む。
シャミの手は、まるで意思を持った生き物のように僕の脇を上下しながらくすぐり続ける。
耐えられずに体を捩っては、刺激を受けてビクリと背筋が伸び、そしてまた体を捩るという悪循環。
涎が垂れそうになるのを必死に堪えながら、くすぐりに耐え続け、やっと解放された頃にはもう、腰が抜けてしまっていた。
「はぁ……はぁ………はぁ……」
シャミに支えられながら、椅子に座る。
猫背になるのも、背もたれに背を預けるのも億劫で、そのままテーブルに突っ伏した。
髪の毛が顔に掛かるが、もう、どうでもいい。心身共に力尽きてしまった……。
「はー……はー……うぅ……」
「……これはこれでありかも……」
そんなことを言うシャミを、全力で睨む。しかし、上手くいかずに逆にシャミを喜ばせてしまった。
……もう、僕の目の前から消えればいいのに。
そう念じても、シャミはいつまでも僕の目の前で、僕の顔をじぃーーーーーーーーっと覗いていた。
◇ ◇ ◇
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