幸せの蒼い『森』【小説】

幸せの蒼い『森』【小説】

天ノ河 玉藻  2016-02-02 01:54:26 
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『人間が森に気に入られたら、そいつは“幸せの蒼い森”に招かれる。』
目の前の光景を見て、幼い頃に祖父から聞いた話を思い出す。
“幸せの蒼い森”。誰も知らないその聖域に今、一人の少年が足を踏み入れる。

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  • No.21 by 玉藻  2016-03-30 18:53:52 

よく考えてみると、女装の定義とは一体どうなってるんだろう?
不意に、そう考えてしまう。
「………」
………いや、よそう。スカートなんて身に付けている時点で確実に女装としか言えない。
ボリボリとクッキーを食べながら一定基準の思考を破棄する。
そう例えば、女装だとか、中性的な顔だとか……
とにかく今現在のコンプレックス関連を全て考えないようにしよう。
うん。クッキー美味しい。

そういろいろ考えていると、ミミアさんが立ち止まった。
木々の間から覗く城は全く近付いたようには見えない。どうかしたのかな?
「スティラさん」
「はい?」
不意に名前を呼ばれる。
しかし、ミミアさんは振り返らずに続けた。
「魔法って、知っていますか?」
何か急な質問が飛んできた。
とりあえず「はい。」と答える。
それにしても本当に突然だなぁ。
「では、魔法が実在すると思いますか?」
「は?」
魔法が実在するかどうか。
そんなのは知らない。でも
「あったら、嬉しいなとは思います。」
そんな夢見がちなことを言ってる自分が子供っぽくて、つい笑ってしまう。
ミミアさんも微笑んでくれた。
「ふふ、それじゃあ存分に喜んで頂いて結構ですよ?」
「え?」
そう言って、ミミアさんは目の前にあった一際大きな木に歩み寄る。
それから、木に手を当てて……

「『我が道を開けよ』」

そう言った。

声が、不思議な響き方をする。
そして僕は目の前の光景に驚いてしまう。というか、驚く他ない。


ザァァァァァァァァァ!!


凄まじいスピードで巨木が朽ちて行く。
表面は徐々に乾燥していき、やがてボロボロになって崩れていく。
枝がまるで灰にでもなったかのように削れていって、5秒もしない間に木は木としての形を失っていった。

「え?え!?な……!?えぇ……??」
「魔法です。とは言ってもこれは私のではありませんけどね~」

魔法?そんな馬鹿な。
ニコニコ笑顔でとんでもないことを言ってくれるなこの人は。
しかし、今目の前で起こった現象は?

トリックなんて何もわからない。

本当に魔法!?

一瞬にして巨木が完全に形をなくし、そこから黒い煙のようなものが一気に吹き出た。
「うわぁ!?」
周囲が一瞬にして闇に包まれる。
そしてまたまた一瞬にしてその黒い煙のようなものは消えた。

「さ、こちらですよ~」
「……………………………………………。」

………。
……唖然とする僕をよそに、相変わらず笑顔のミミアさんは歩いて行く。

気付けば城が目の前に聳え立っていた。

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