ココロの住人 2016-01-20 03:09:44 |
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おかえり、束紗君。君の部屋なんだから、帰ってくる来ないを決めるのは君の自由だよ......それにこの部屋に君が帰ってくるのを待っていたかったっていうのは、俺の我儘だから謝らないで。
(久しく感じていなかった彼の体温、声、匂い全てが自分自身をリラックスさせてくれるようなそんな効用でもあるかのように体に入っていた力が抜けるのを感じながら、存在を確かめるようにそっと、しかし宝物を抱き締めるように彼の背に手を回して。「待ってる」という罪悪感を植え付けてしまいかねない言葉の意味を静かに耳を澄ませながら打ち明けられた切迫した気持ちの中で見つければ、チクリと胸が痛むのを感じ。そんな事の繰り返しで無意識の内に彼を縛り付けていたのではと感情を探るように彼の髪に触れて。しかし、そんな気持ちとは裏腹に自分を必要としてくれていたという事実を何者にも代え難い存在である恋人の口から告げられれば笑みが零れるのが抑えきれず幸福感で胸が満たされてしまう。今まで一緒にいた時間を愛している度合いへ変換してしまうのは人間の常であり、それは俺達にも当てはまる事で俺じゃない誰かとの方が彼を幸せに出来るのではないかと悩む時は必ず一度は来るもの。歳が離れているという事が弊害になったりもする。人生の伴侶より、あやふやなままのほうがきっと自由に生きられるだろうし、気楽だ。そして人恋しいときはお互いを求め合えば容量の少ない心は簡単に一杯になる。人生なんて案外適当で安定したレールがどこかしらに散りばめられている、生きている時間をこの世と別れるまで特定の誰かと過ごすと決める方が勇気のいる事なのかもしれない。愛なんてものは本来存在しない物だと言う人もいるのだから。俺はこの先彼のいない1人だけの時間を過ごすくらいならもう辞めてしまってもいいくらいには...なんて大袈裟だけれど。またこんなこと言ってしまったら君を束縛するみたいで、苦しめたい訳じゃないのにどう言葉に表せば伝わるのか、いや伝わって欲しいのかもわからないなんて考え込んでしまっていれば、ただ純粋に自分の答えを待っている瞳に意識を搦めとられてしまって。「君が必要だ」なんてただこの場を納めるための言葉にはなって欲しくない。けれど「俺は君が好きだよ...どうしようもないくらい、同じ事しか言えなくてごめんね」と幼稚な台詞を吐くくらいしか自分には出来なくて、会いたかったという切望の気持ちにちゃんと返せたのだろうかと自問自答が自分の頭を駆け巡って。「依存や束縛したい訳じゃない、ただ束紗君が俺の事を好きでいようがいまいが束紗君に幸せになってもらいたいっていう気持ちは変わらない。その為なら俺は君を失ってもいい.....そのくらいの覚悟はある。この考えを強要したい訳でもないし、そうなんだって知っておいて欲しいだけだから。又こんな言い方じゃ誤解させてしまうかもしれないけど、束紗君と別れたい訳じゃないよ」言ってしまってからまた彼に不安な思いをさせてしまうかもしれないと気付けば付け足し揺れる瞳にどう自分は写っているのだろうかと見つめ返しながら思案して。)
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