雪月 2015-11-04 02:43:42 |
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むかーしむかしあるところに、とっても豊かな国がありました。
その国を治める女王様は、なにがなんでも完璧にしなければ気が済みませんでした。
些細な事も見落とさず、小さな罪も許さず、自分にも周りにも何時も厳しい女王様あってこそ、黄金時代と称えられるほどに栄えました。
跡継ぎとなる王女様も女王様自らが行いました……全ては更に完全なる国を目指して。
女王様はやる事成す事すべてが徹底しておりました。
自分に不満を持つ人を消すときも他の誰かを唆し、あたかも自分からやったように仕向けさせました。
人口を間引く時も王女様を唆し、あたかも自分で命じたように仕向けさせました。
名君で在り続けるために、非情な決断を他人にやらせ、自分の手を汚す事はありませんでした。
しかし、他人に押し付け続ける度に、自分を良く見せようとする度に、国を良くしようとする度に、自分の不完全さが浮き彫りになっていきました。
そこで女王様は、自分の不完全な部分を取り除くべく、自分の身体をナイフで削ぎ落とし始めました。
「この腕が完全でない」となだらかな腕を削ぎ、「この脚が完全でない」と撫で心地の良さそうな脚を削ぎ、「この胸が完全でない」と曲線を描いた胸を削ぎ、あれもこれもと削いでる内に、とうとうそのまま死んでしまいました。
…………アイツが治めていた頃を黄金時代だったと後世の奴らは言っていたが、そう見えただけなんだ。
実際は悪い部分に蓋して見せて無かっただけ。悪い記録を隠蔽して抹消してただけ。
アイツが国を……自分を良く見せようとする度に、そのしわ寄せがあろう事か国民や跡継ぎとかといった自分以外に降りかかってただけ。
鍍金時代の箱庭の女王は、およそ国を治めるのに向いちゃいなかったというわけだ。
裏方が得意みたいだったし、秘書とか主婦とかメイドとかの方が向いてたのかもな。
もしアイツが奥さんだったら……旦那さんも頑張れちゃうかも。
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