ハナミズキ 2015-10-30 16:57:47 |
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「ユーリ!どこへ行ってたんだい!? 外は危ないからここに居ないとダメじゃないか」
女将さんは心配そうな顔で、戻ってきたユーリを抱きしめた。ユーリは申し訳のなさそうな顔をして、「ごめんなさい・・・・。」と呟くのであった。
誰かに本気で心配をしてもらったのはいつ以来だろうか。ユーリが病気になってからは、みんな心配そうな顔はするけれど、どこか同情心から来る心配顔しか見ていなかったのだ。「まだ小さいのに、可愛そう」、そういう気持ちが見え隠れする心配顔であった。
ユーリの胸はほんわかと温かくなり、モリト達が戻って来るまで店の中で大人しく過ごしていた。
しばらくするとモリト達が帰ってきた。ゴブリンには出会わなかったが、その代わりにグリュフォンに会ったという。そして驚いた事に、それを倒したと言い、その証拠だとドロップ品を広げて見せてくれた。
「あんたたち、たいしたもんだねぇ~。そのレベルであんな魔物を倒せるなんてさ」
「俺達だけでは無理でしたよ。今頃やられてます…。」
「そうだよな、しかしモリトがあんなに強いなんて、まだ信じられないな」
「うん…。モリトが居なかったら今頃私たちは・・・・。」
などと、その戦いぶりと強さを自分の事の様に話しはじめるのだった。
「そう言えば…、村にもグリュフォンが出たようだったが、駆け付けた時には何にも居なかったな・・・・、あの鳴き声はいったい何だったんだ…?!」
宿屋の主人は小首を傾げながらポツリと言った。その時、モリトだけは気が付いていた。ユーリが退治したと。チラリとユーリの方を見ると、ユーリは小さくVサインをしている。
『やっぱり・・・・』そう思い、この人にはかなわないな…と、改めて尊敬をした。
魔物が現れてから人が駆けつけてくるまでの時間なんて、そんなにあるものではない。その短時間で退治してしまうとは・・・・。味方でいれば頼もしいが、もし敵だったとしたら、これ程恐ろしい人物は他に居ないだろう。そう思っていたのである。
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