猫。 2015-07-15 19:17:46 |
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ドラクリオット! _ プロポーズ _
____after story _____
疲れて寝てしまっている梓の頬を撫でる。
泣いてしまったのも有るし、体力的にも疲れてしまったのだろう。
比較的に小さな寝息をたてる無邪気な子供のような梓を抱き寄せた。
「……ごめんな。」
先程までの梓を思い出しては謝罪。
最近良く美羽と行動するようになり、付き合い始めた記念日である昨日すらも美羽と買い物に行っていたのだ。
帰ってきた梓はどことなく不機嫌だったから理由を聞けば泣き出してしまう始末。
……本当に悪い事をしてしまったな。
「………はぁ…」
そのあどけない無邪気な姿で眠る梓の頬を撫でつつその寝息を聞く。
こうやって梓の寝顔を見ていると罪悪感しかでない。……もう少し気の効くようにしないとな。
「………」
そして先程から心拍数が上がっている要因をどう渡せば良いのかと悩んでいるのも本当。
実は最近、良くこのことで美羽と一緒に行動をしていた。給料3ヶ月分きっちりと、漸く梓との未来を約束する切符を買えたのだ。
婚約指輪。
しっかりしなさいよ、という美羽の励ましもあるし、ちゃんとしなくてはならない、…ならない、のだが。
「…………どうしたもんか。」
一人でぽつりと囁いた言葉は静かな俺の部屋に響いて。
壁際に眠る梓、緩く絡められた手に意識を戻した。そろり、と左手薬指に指を這わせて、梓を見た。
うじうじしてられない、か。
「…するか。」
サイドテーブルの小さな引き出しに忍ばせておいた四角い正方形の箱を取り出す。
そして中を開けて確認。
「…大丈夫だな。」
起きないように温めてから眠る梓の左手薬指へと指輪を忍ばせた。
「…サイズもぴったり、だな。」
すやすやと無邪気な梓の左手薬指に付けられている婚約指輪はきらきらと部屋の光に反射して。渡したのだ、という達成感から張り詰めていた吐息を吐き出し、その息を長く長く吐き出し続けた。
「…喜んで貰えると良いんだが」
そう続けた俺は梓を抱き寄せて眠りに就いた。
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「ん………」
目を開けるともう時刻は夕方。
学院に行く用意をしなくてはならない。
少し疲労から行きたくないと訴えるように重い体を起こして隣でまだ相変わらず眠り続ける梓を見た。
大きな欠伸をしつつ、数回その柔らかそうな頬をつんつんと指でつつく。
「………ぅう……」
唸る梓。
またそれが面白くてつつき続ける。
「……んぅ…ゆーと…くん?」
どうやら起こしてしまったらしい、少し残念な気もするが彼女のその寝起きの姿を見れるのもまた満足だった。
「おはよう、梓」
「おはよー…もう起きなきゃだね……」
んー、と伸びをしてまた梓も大きな欠伸をする。そして少し寝起きの目のまますりすりと俺に近寄り抱きつき、そして首へと回される腕。
「起きなくて良いのか?」
「んーっと…少しだけゆーと君補給、かな…」
「なんだそれ。」
寝ぼけて甘える梓の後頭部を撫でて、いつになったら気付くのであろう左手の指輪を思い出し苦笑する。
責めて共有スペースに行く迄に判明してくれたら助かるのだが。
「…んー……ゆーとくん……」
「どうした?」
「…えへへ、だぁいすき……」
そう続けて俺の頬へとキスを落とす梓。
その様子を見つつもうお決まりの言葉を口に出した。
「俺も愛してるよ。」
そう続けて梓の後頭部を撫でた刹那、今まで擦り寄っていた梓の動きが止まった。
「あ、あれ?」
「どうした?」
「…こ、…これっ、て…?」
少し強く抱きついた時に気づいたのだろう、左手薬指へと目線を向けた梓。
そしてすぐに起き上がると梓は数回俺の顔を凝視して、すぐに涙を溜めた。
「漸く気付いたな、……梓。」
少し笑みを漏らしつつまだどこか放心状態の梓を抱きしめる。
「梓を一生俺のものにしたい、結婚してくれるか?」
「…………ーーーっ!!」
涙の堤防が壊れたように泣き出してしまう梓。
「また泣いちゃうのか?」
「………っだ、ってぇ…っ…ぐすっ」
涙を一生懸命拭い、そしてその涙目のまま俺の首筋へと頭を寄せた梓。
そして梓は、涙から乱れる吐息を整えて静かに俺を見上げた。
「……私で良ければ…っ宜しく御願いします……っ」
半ば泣いたまま、でも確かに聞こえてきた承諾の声に頬を緩ませた。
そしてまた泣き出してしまう愛しいお嫁さんを慰めつつ、そして愛を囁き続けた。
「愛してるよ、梓」
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(同僚から友達、恋人から妻へと。確かに移り変わる俺達の恋物語。でも終着点はなく、ずーっと続く恋物語。これからも沢山幸せになろうな。)
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