短編です

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雪風  2015-06-07 23:36:40 
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  • No.4 by 雪風  2015-06-12 22:20:53 

「……欲しいの?この子を。」

女性は意外そうな表情を僕に向けた。

「はい。……駄目ですか?」

「う~ん。駄目じゃないけど、さっき言った通りこの子は目が見えないのよ。」

「ええ……聞きました。」

「君、猫を飼ったことあるの?」

「ありません。」

「最初に飼うのは、この子のような目が見えない猫じゃない方がいいと思うよ。直ぐには無理だけど、この子の母猫はまた産むだろうから、次に生まれる子達の中の一匹を君にあげる。元気の良い子をね。連絡先を教えてくれる?生まれたら一番に電話するから。」

そう言って女性は仔猫をゆっくりと地面に下ろす。

そして、左手一つで仔猫の自由を奪っている。仔猫が動かないよう押さえつけている。

ジタバタするが、仔猫は小さく力がない。出来ることは、

ミャァ~

と細い鳴き声えで女性に抗議の意思を示すのがやっとだった。

そして右手の方は、
エプロンのポケットに手を入れ、携帯を取り出していた。

どうやら僕の電話番号を自分の携帯に登録するつもりの様だ。

あまり後先考えず行動するタイプに感じた。

電話番号を訊かれるより先に僕が口を開く。

「僕は猫が飼いたいんじゃないんです。


「えっ?」

僕の言葉に女性は少し驚いたようだ。
それでなのか、拘束していた手が緩み仔猫は解放された。

それでもさっきみたいに走ることはなく、女性の周りをうろうろする。

「猫が欲しいなんて思ったこと、人生で一度も無かったんです。ついさっきまでは……」

言葉を切ったが女性は何も言わない。次の僕の言葉を待っている。

「だから、この仔猫なんです……。他の猫では駄目なんです。この仔猫がいいんです。大事にします。お願いします!」

そう言って女性に向かって頭を下げる。

下を向く僕の視界に仔猫が入ってくる。僕の足元にすり寄る。

「ありゃ、この子も君を選んだか。相思相愛ね。」

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