雪風 2015-06-07 23:36:40 |
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ミャア~
仔猫が力ない声で鳴く。
両手を差し出してくる。
あわてて立ち上がり女性の前に立つ。
「さあ、泣いてないで抱っこしてあげて。君をずっと待っていたんだから。」
女性が仔猫を受けとるよう促してきた。
抱いたら壊れてしまいそうな感覚に襲われ、おそるおそる仔猫を受け取る。
僕を見つめる仔猫の瞳が無垢で心が痛かった。
「僕を待ってくれていたんですか?この仔猫は……。」
女性は頷いて言う。
「そうだと思うよ。この子、まだ動けた頃は、あの日に君と会った時間ごろになると家の外に出てたからね。」
哀しみの強さが増す。哀しみは後悔のせい。
涙がボタボタ落ちて仔猫の身体に当たる。
ごめんね……ごめんね……
何度もそう呟きながら涙がとまらなかった。
「少しの間さ、この子をそのまま抱っこしてあげていてよ。」
女性は、仔猫を泣きながら抱いて立ちすくむ僕に向かってそう言うと縁側に座った。
「君も座ってよ。」
涙は止まらない。立ちすくむしかない。
「僕は……この家の前を通ることを避けていたんです。」
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