雪風 2015-06-07 23:36:40 |
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ベッドに寝転がっていると、お母さんは食事を持ってやって来た。そして、テーブルに食事を置いた。
この離れは玄関と十畳の部屋とトイレしかない。
十畳の部屋には、僕が寝転がっているベッド、タンスと本棚と勉強机が部屋の端に置いてある。
そして、部屋の中央にテーブルがあり椅子が四脚ある。
四脚あっても僕しか使用しないのから、いつもならば一つで充分だ。
今夜は普段使われていない椅子にお母さんが腰を掛けた。
「少し話をしてもいい?」
僕は起き上がり、食事が置かれたお母さんの正面の席につく。
「どうしたの?」
お母さんが何を言い出すのか不安になりながら、努めて穏やかな顔をしながら訊いた。
「食べながら聞いて。」
お母さんの表情を伺うが読み取れない。笑みもなければ深刻そうでもない。普通の表情としか表現のしようがない。
お母さんも僕同様、表情を作っているのだろうか。
「いただきます。」
とにかく食べ始めるしかない。
暫く僕が食べる様子をただ見ていたお母さんが口を開く。
「猫のことだけど……」
さて、お母さんは何を喋り出すのだろう。
「うん……。」
「さっき、お父さんと話してね……」
「うん……。」
「お父さんが、あなたが飼いたのだから飼うべきだって……」
「………。」
「あなたはこの離れで一人だし、飼ったらいいんじゃないか、って。うんん、飼った方が良いだろうと言ってくれたのよ。」
お母さんは僕の顔を覗き込むようにしながら言った。
「結衣ちゃんは何て言ってるの?犬が飼いたいんでしょう?と言うか、僕が猫を飼うのは反対なんでしょう?」
お母さんは少しだけ困った顔で首を振る。
「そうね。結衣ちゃんは反対なんでしょうね。でも、お父さんは結衣ちゃんを説得してくれるって。だから大丈夫よ。」
僕の心は揺れた。
仔猫と一緒にいられるかもしれない。
そう思い、心が揺れた。
一緒にいたい。
結衣の説得はまだだけど、僕は結衣に対して卑屈にはならないと決めた。
「ありがとう、お母さん。」
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