匿名ゆき 2014-11-23 17:15:10 |
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多世界解釈
『幽霊は存在すると思う?』
四年前の放課後,自習室に向かう僕に声がかかった.
「どうだろう.いてほしいなとは思っているよ.」
『ふ~ん.』
「ここじゃない世界なら存在を認められていたかもね.」
彼女は何か不満そうにも怪訝そうにも見える表情で僕を見つめてきた.
やっぱり幽霊がいてほしいなと思うのは変なことなのだろうか.
それとも幽霊とは量子,量子的な状態の重ね合わせのメタファーだったのだろうか.
エッシャーの作風に影響を与えたペンローズの三角形,そのペンローズは量子脳理論という一見トンデモ話を展開している.
死後,意識は脳から出て拡散し,別の生命体と結合し生まれ変わる,などと話しているらしい.
近年は放送連盟の奴らがうるさいからな.
彼らの方でも顔を出せない事情があるらしい.
其処彼処に幽霊が存在していることが証明されたら,肩身の狭い思いをするのは僕達だというのに.
まぁ,好きなだけ迫害するといい.
不法投棄の瞬間を一瞥される気まずさに比べれば,幽霊を蔑ろにすることは気にならないらしい.
科学の一分野では存在性の曖昧な対象を平気で取り込んでいる.
案外科学的なものの方が霊的なものを無意識のうちに肯定しているのかもしれないね.
物理学…彼女は宇宙創成の一瞬に起きた出来事に強い関心を抱いている.
物理学とは他の学問と比べてどう異なるのだろう.
数学には形而上学的理想への接近がある.
我々には数1を感じることは出来ない.
物理学は数学とは異なり,現実的で感覚可能なものを記述する学問なのではないだろうか.
感覚可能なものが先に存在し,それに対応する数学的表現は単なる記号に過ぎないのではないか.
いや,数学的概念が先に存在し,それに則る形でしか存在しえないのだろうか.
朦朧とした単調な歩みの中で絶えず疲弊を繰り返し,原理と構造の相互浸透の過程で何を見るのだろうか.
これはきっと理論物理学と数理物理学の関係に置き換えられる.
彼女が前者で僕は…
「不思議だね,ずれてるのにこんなに惹かれ合ってしまったなんて.」
『君が一方的に僕のこと好いているだけだよ.』
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