ハナミズキ 2014-08-20 16:01:01 |
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次の日、主人を失ったこの宿屋をどうしようか考えたが、誰かに任せてもまた直ぐに盗賊一味がやってくる事だろうと思い、そのまま放置をして宿を後にした。
魔馬に乗り、空から下界の様子を見ると、どこまでも続く砂漠が見える。
この大陸の砂漠化は相当深刻なようだ。
そのまま一気に王都まで進み、魔王の居る城に着いた。
門番や衛兵たちはどうにでも出来るが、なるべくなら穏便に事を進めたいと思っているサラは、城の外堀から城内に力を使い移動をした。
移動をした場所は魔王玉座の間だった。
天井付近にある窓枠に立ち、中の様子を伺っていた。
「何!?また住民が第一大陸に逃げただと!?
見つけ出し即刻連れ戻せ!!」
「いや待て、これは良い機会かもしれん。
あの大陸は昔から豊かな土地と豊富な資源が眠っておるはずだ。
それに、あの大陸の王は魔力も使えぬ者だと聞く。
私がその王に代わって大陸を収めてやろうではないか」
「御意」
「どうする?イアン」サラが笑いながらイアンに問う。
「なんでイアンにそんな事聞くんだよ。イアンに聞いてもしょうがないだろ」
ヤンがぶつくさ言っているが、サラ達は気にもしていなかった。
「まぁ、一応話し合いだけでもしとくか・・・」
そういうといきなりイアンは玉座の前に移動をした。
遠くからその光景を見つめるサラ達だったが、イアンの事を心配したヤンが後を付いて行ってしまった。
「あらら・・・ヤンったら・・・」
急に目の前に現れたイアンとヤンに、第三大陸の魔王が大声を出した。
「貴様ら!何者だ!?どこから入って来た!!」
「今俺の事を話してただろ。
で?俺の大陸をどうしたいって?」
「貴様の大陸だと?」
「俺が第一大陸の王だ。奪い取るとか何とか言ってたよな?」
『おぃおぃ!ちょっと待てよイアン!いうに事欠いて自分が魔王だと?!』
「ほほぉー。貴様が魔力も使えぬひ弱な王か」
「それはどうかな?」
『イアン、やばいって!それ以上はったりかますなって!!』
ヤンは心の中で焦っていた。
今まで肝心な時に限って居ないか、気を失ってるかのヤンは、イアンの本当の力を知らなかったからだ。
「一つ言っておこう。私はこの大陸に来て不埒な行いをする者は問答無用で始末できるが、
他の大陸から来た者が、この大陸に住む者の命を奪う事は許されてはいないという事を知っておる のか?」
「当然知ってるさ。だから俺はお前を殺しに来たんじゃなく、話し合いに来たんだ」
「話し合いだと?無駄な事を・・・」
呪文を唱え攻撃を放つ。
しかしイアンには傷一つ負わせる事が出来なかった。
「な・・なんだと!?」
「貴様今いったい何をした!!」
「別に何も。あんなのが当たったら危ないだろ。だから相殺したまでだ」
「くっ・・・、皆の者!一斉に攻撃じゃ!」
部屋中に呪文を呟く声が響き渡る。だが。
「そこまでよ。第三大陸の魔王」
サラがイアンの横に現れた。
「サラ!何しに来た!危ないから隠れてろ!」
ヤンが叫びながらサラの腕を引っ張ろうとしたが、サラはその手を払いのけた。
「大丈夫よ、ヤン」
「第三大陸の王よ、貴方にはもうこの大陸を収めるには値しないと判断しました。
したがってその任をたった今解きます。
民を守るどころかないがしろにし、領地は荒れ果て、この様はなんですか!?
任された責任を全うできなかった場合、貴方はご自分がどうなるかわかっていますね?」
「何の事だかな。貴様にそんな権限はない!」
「それがあるのよねぇ~」
「消えなさい。第三大陸の魔王よ」
サラがそう言うと、魔王の姿がキラキラとした光の雫と化し消えていった。
「えっ!?ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
ヤンが驚きのあまり、間抜けな顔で口をパクパクさせてサラの方を見ている。
サラはそんなヤンを尻目に、玉座に座り訓示を出した。
「今を持ってこの第三大陸は、わたくしサラが取り仕切ります。
そして、この荒廃した大陸は今より第一大陸とくっ付け、新羅大陸と名付けます。
新羅大陸の魔王となる者は、今ここに居る、第一大陸の魔王、ブライアン・グリスフォードに一任 するものとし、今より彼の者の配下に下ることを命じる。
以上の事を即刻、かつ迅速に各諸国に伝達をすること」
そう言い渡すとサラが立ち上がり、1本の杖を空間から取り出した。
その杖を持ち城の外に出て、天に向かって振りかざした。
すると、ゴゴゴゴッという音と共に大陸が移動を始める。
大陸と大陸がピッタリとくっ付くのではなく、大陸同士の一部が、大陸にかかる橋の如くくっ付いたのだった。
やっと正気に戻ったヤンが
「ちょっと待ってくれサラ・・・サラっていったい何者なんだ?
それにさっき、イアンの事魔王って言ってなかったか?」
「ええ。言ったわよ?」
「えっ?ええっ?ええええええっっ!?」
「お前は知ってたのかよクリス!?」
「うん。知ってるよ?」
「じゃ・・・サラっていったい何者・・・?」
「ヤンは、伝説の魔女って知ってるかぃ?」
「そりゃ知ってるさ。有名な人だしな。」
「・・・・・・まさか?」
「そのまさかだよ」
クリスが苦笑いをしながら言った。
「えええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ?!」
今まで二人に対する無礼の数々が脳裏を過ぎる
一瞬、「俺も消されちゃう?」などと考えてしまった。
「さてっと。これからが大仕事ね。
イアン、貴方にも手伝ってもらうわよ」
「了解。
で?俺は何をすればいいの?」
「貴方には水源の引き方を教えたわよね。
水源を引いたら、緑化の応用で森林を増やしてちょうだい。
ここから南半分は貴方に任せるから。
出来る?」
「了解。
後は適当に整地しとけばいいんだろ?」
「その通りよ。私は北半分を担当するわ。
ヤン。付いて来なさい」
「は、はい!サラ様!」
ヤンが「サラ」から「サラ様」に呼び名が変わった瞬間である。
二人は手分けをして砂漠化していた土地に水源を引き、緑を増やし、痩せていた土地には栄気を吹き込み、作物がよく育ちそうな豊かな土地にした。
土地争いをしていた者達も大喜びをして、元より住んでいた自分の故郷に戻って行ったのであった。
突然の事態に反旗をひるがえす者達は、容赦なく懲罰、又は極刑を申しわたされ、悪だくみを考えていた者達は、全て一掃された。
多くの領主たちが捕えられ、その後見には代理の者がたてられ、その選抜に大忙しになったのだった。
その為、イアン達は一度城に帰る事にした。
城に戻り、新しく領地になった国の領主を決めている間、クリスは王専属の側近及び護衛官として働き、ヤンは近衛隊で訓練をさせられていた。
しばらく大陸が落ち着くまで、この生活は続きそうだ。
そしてサラはと言うと、一人で旅に出たのである。
イアンは不満そうだったが、サラが居てもやる事が無かったので、いつもの様にどこかの国でひっそりと暮らすようだ。
サラがどこに居ようとも、イアンだけにはサラの居場所がわかる為、暇を見つけては逃げるように時々サラに会いに行っている。
その度に置いて行かれたクリスが悔しそうな顔をして
「イアン様――――!!」と、空に向かって叫ぶのだった。
― 完 ―
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