ハナミズキ 2014-08-20 16:01:01 |
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稽古も終わり山の谷間を移動してる途中で、旅人を狙う山賊一味に襲われた。
馬車を止め先陣を切って飛び出していくクリス。
その後を追うようにヤンが行くが、相手の山賊一味は20人程いた。
当然一対一の戦闘には持ち込めず、一対数人という形になってしまう。
イアンは相変わらずサラを守り、サラの側から離れようとはしない。
ヤンが一人倒す間にクリスは3人ほど倒し、ヤンとクリスの間をすり抜けてきた賊は、イアンの所で瞬殺される。
すべての山賊を倒し終わった後、ヤンは自分の剣が実践では殆ど役に立たず、今まで驕(おごって)っていた自分が少し恥ずかしくなってきた。
それでもヤンの腕前は、試験に合格したばかりにしてはなかなかの物であり、決して恥ずかしい事はなかったのだが、二人の腕前を目の前で見せられてしまっては、ぐうの音も出なかったようだ。
「ハァハァ・・・お前すげぇな・・・」
息切れをしながらクリスの側に寄って来る。
しかしクリスの方は息切れひとつしていなかった。
そしてチラリとイアンの方を見れば、相変わらず震えながらサラにくっ付いているように見えた。
戦闘中周りを見渡す余裕がまだないヤンには、そう見えたのだった。
ここでヤンから見た人物紹介をしよう。
サラ 可憐で清楚、可愛さの中にもどことなく漂う色気も加わり、とても美しい少女だ。
栗色の髪にブルーの瞳、守ってあげたくなるほどの、儚げさが漂う。
イアン 金色の髪にグリーンアイ、端正な顔立ちで俗にいうイケメンだ。
知的聡明で、ヤンから見れば腹黒さにも見えていた。
学問はできそうだが、武術はからっきしの優男。
クリス 昔は自分の方が、全てにおいて優秀だったが、今は少しだけ認めてやっている。
黒髪で茶色の瞳、どこにでも居そうな普通の少年だ。
そしてヤンは思う。
『やっぱサラとお似合いなのはこの俺様だな!
クリスじゃどう見ても弟って感じだし、イアンはサラに危険が及んでも助けられる
とは到底思えないしな。
さっきも震えながらサラにくっ付いてたほどだし。
やっぱここは、この俺様がサラを守ってやらないとな!!』
そんな妄想を密かに抱いていたのだった。
町に着き、宿屋に到着すると、空いてる部屋が2つしかないという。
それも二人部屋が2室だ。
男3人が一つの部屋に入り、一人が椅子か床で寝るのかと思いきや、クリスとヤン。
イアンとサラが同室になるという。
「その組み合わせじゃ、サラが誰かにお襲われそうになった時、だれが助けるんだよ」
「イアン様が居るから大丈夫だよ」
「イアンじゃ役に立ちそうにないから言ってるんだろ!?」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
「・・・大丈夫よヤン。こう見えてもイアンは、私の次に強い人だから」
『・・・つまりそれって・・・この中で一番弱いのがイアンだと言ってないか・・・?』
ヤンはそう思ったが、敢えて言わないでおこうと思った。
何かとんでもない勘違いをしているヤンだったが、根は真面目(多少私利私欲は入る)で、護衛官としての使命は忘れてはいなかった。
この時期宿屋が埋まるほどの何かがあるのかと、宿屋の店主に尋ねると、この町がなんと、あの伝説の魔女が生まれた土地だと言う。
それを祝って毎年誕生祭を行っているらしい。
それに、毎年この日だけは、あの伝説の魔女がこの地にやって来て、人々に祝福の光をささげてくれるらしい。
「すっげぇええええ!!あの伝説の魔女に会えるのか?!」
目をキラキラと輝かせてヤンが飛び上がって喜んでいる。
3人は顔を見合わせながら小首を傾げながらため息をついた。
「また偽物ですか・・・」
クリスが小声でつぶやいたが、誰にもその声は届いてはいなかった
「何処に行けば伝説の魔女に会えるんだ?」
「向こうに見える山の神殿にお越しになるそうですよ。でも・・・」
「でも?」
「伝説の魔女にお会いになる為には、奉納金が必要になりまして」
「金を取るのかよ・・・」
「はい。1万ゴールド程かかるそうです」
ヤンの給金が月々180ゴールド、日本円にするなら18万というところだ。
つまり、1000万程かかるという事だ。
「ぼったくりかよ!!??」
「いえいえ、それだけご利益があるという事ですよ」
「・・・・・ちょっと会ってみたいわね、噂の魔女さんにw」
「行くのか?」
イアンが呆れたように尋ねた。
「だってぇ~、気になるじゃない」
クスクスと笑いながら、楽しそうに答える。
こうなってしまったサラを止める事は誰にもできないのであった。
次の日、朝早くから誕生祭の祝福を個人的に受けるために、大勢の人々が神殿のそびえ立つ山に向かい歩いていた。
神殿に近ければ近いほど、その祝福の量は盛大に受けられる。
お金を持っている貴族や豪商たちは、奉納金を払い神殿の中まで入っていき、直接祝福を受ける事ができるのだ。
神殿の前まで来ると、怪我をしている者や病気などで苦しんでいる者が、少しでも伝説の魔女の祝福の恩恵に授かろうとやっきになっていた。
「押すなじじぃ!邪魔なんだよ!」
「お前こそどけろ!俺は今年の商売がかかってんだ!」
など、罵声が飛び交っている。
「ひっひっひ。早速ご利益か?こんな所に綺麗なねぇちゃんが居るぞ」
見るからに悪人顔の人がサラを見ながら舌なめずりをする。
それに気が付いたヤンとクリスがサラの前に立ちはだかり、男達に威嚇をする。
「ガキがなに偉そうにガン飛ばしてんだ?ぁん?!」
その場にいた男達と軽く乱闘が始まった。
しかし、力の差は歴然であり、決着は直ぐにつく事になる。
しかしその後も、同じ輩の男共から幾度となくいやらしい目で舐め回されるサラだった。
当のサラは慣れているのか気にする事もなく、その後始末に明け暮れていたのがヤンとクリスだったのだ。
祝福を授ける時間になり、空から大量のキラキラと光る美しい光が降り注いできた。
人々はそれを全身にくまなくまとい付けると、生気が少し元に戻るようだ。
怪我や病気が完治するわけではなく、少し良くなるだけの様だ。
「これが祝福なのか??」
ヤンが不思議そうな顔をしている。
「これだけ大勢の人に平等に分けてくださってるんだから、ありがたい事ですよ」
隣にいたおじいさんとその連れの息子らしき人がそう言った。
おじいさんとその息子が言うには、おじいさんの体の調子は少し回復をしたが、息子の目の病は回復する兆しが無かったと言う。
そもそもおじいさんは、息子の目が治るようにと、わざわざこの神殿まで連れて来たようだ。
個人的に奉納金を払って診て貰えば、直ぐに治るのだろうが、この人達にはそんな大金は払えない。
だから限りなく近いこの場所までやって来たという事だった。
「ちょっと診せてね」
サラが息子の目に手をかざす。
ほんのり暖かい空気に包まれ、息子が閉じていた目を少しずつ開けると、今まで真っ暗で何も見えていなかったその瞳に、眩いばかりの光が飛び込んできた。
その光に慣れ始めたころ、周りの景色もはっきりと見えだしたのだ。
喜んだその息子はその事を父親であるおじいさんに言うが、おじいさんがいくら周りを探しても、先ほどの少女の姿は見つけられなかった。
ある意味、本当に伝説の魔女の祝福を受けたのは、この息子だけなのかも知れない。
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