ハナミズキ 2014-08-20 16:01:01 |
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ほろ馬車の御者台には、クリスとヤンが座っている。
イアンとサラは、幌の中で休んでいたが、サラの方がイアンの肩にもたれ掛るように居眠りをしているようだ。
馬車の揺れでサラが倒れないように、イアンがサラの腰に手を回し体を支えていた。
ヤンが後ろをちらりと見ると、クリスに小声で話しかける。
「なぁ、あの二人ってできてるのか?」
「ん~・・・、できてるって言うか、相思相愛なのは間違いがないとは思うけど・・」
「それにしてもサラって美人だよな」
「ヤン!サラ様を呼ぶ捨てにするな!」
急にクリスが大声を出したので、後ろでうたた寝をしていたサラが目を覚ましてしまった。
「ん・・・どうしたの?クリス・・」眠い目を擦りながら言う。
「何でもありませんよ、サラ様」
「ん・・・」
まだ眠そうに小さな返事を一つして、サラはまた眠りに入ってしまった。
昼食をとるため、程よく開けた草原に馬車を止め、近くにある小川に水を汲みにクリスとヤンが出か出た。
イアンとサラは竈の準備と小枝拾いだ。
準備と言っても、ちゃちゃっと魔法でやってしまうのですぐに済んでしまう。
汲んできた水でお湯を沸かし、スープを作り、中に入れる材料をサラが幌の中にとりに行く。
幌の一番奥にある布状のカーテンの中に入っていったサラは、どこからともなく野菜や肉類を持って現れた。
ヤン以外はカーテンの向こうでサラが何をしているのか知っているが、この旅に同行したばかりのヤンには皆目見当もつかないでいた。
「なぁ、サラってあれどっから持ってくんだ?」
「サラ様だ」
「どっちだっていいだろ?どうせ貴族様じゃないんだしよ」
悪い子ではないのだが、ヤンは今のところ目先の利益しか興味がないようだ。
イアンとサラの事を、同じ平民だと思い込み、いくら雇い主だとは言っても、見るからに自分より年下のサラに媚を売るようなまねはしたくなかった。
イアンにしても、自分と大した変わらない年恰好なので、雇主というより友達感覚なのだ。
その態度に青くなったり赤くなったりして焦っているのがクリスというわけだ。
「よし!食事も終わったし、ヤン、剣の稽古するぞ」
「お前が俺に勝てるのかよ」
「あら、クリスは強いわよ?イアンの次にねw」
サラが冗談を言ってると思い、ヤンは本気にはしてなかった。
昔、訓練所に居た時は、クリスよりヤンの方が強かったわけで、それに今年、あの難関だと言われている試験にも合格をした事に、ヤンは少し有頂天になっていた。
が・・・、サラの言っている事が正しいという事がすぐに分かった。
あっという間に勝負がついてしまい、何度やっても勝てない。
「お前はもっと相手の先読みをした方がいいよ。
俺一人なら何とかなるかもしれないけど、複数になったら死ぬぞ?」
「はん。そんなへまはしねぇよ」
「いやいや・・・マジで死ぬって」
そんな二人のやり取りを聞いていたイアンとサラは、やっぱりヤンを同行させて正解だったと、楽しそうに、生き生きとして話しているクリスを見つめながら思っていた。
まだ実践を経験していないヤンにとって、軽く考えていたこの事は、この後すぐに身に染みて分かることになる。
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