ハナミズキ 2014-08-20 16:01:01 |
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城を離れて5年。クリスを仲間にして旅を始めてからは3年の月日が経っていた。
この頃になると、イアンはほぼ魔力のコントロールができるようになり、SS級ランク(大陸の王クラス)の魔族が5人で束になって攻撃して、やっと相打ちで勝てるのではないかと言う実力の持ち主になっていた。
クリスの方はと言うと、年の頃は16歳程度の少年に育ち、背は170cmとイアンよりは13cmほど小さかったが、武術の腕前はAAAランクまでに上がっていた。
AAAランクと言うのは、王直属の護衛官の中でも、中隊長クラスの腕前である。
統括責任者の大隊長でSランク、中隊長でAAAランク、小隊長がAAランクだ。
Aランク→警備・衛兵・近衛隊などの、統括大隊長
Bランク→その他もろもろの隊長クラス
そして、街の警備等をやっている衛兵達は、一番下っ端のFランクの者達。
普通に職に就くとFランクから始まるのだが、学問の都で行われる年2回の試験に合格すると、Cランクからから始まる。
それなりの実力がないと受からず、年間で採用される人数は50人にも満たない。
この試験に受かれば、各領地に配属され、領主内の警護に当たることになる。
いわばエリート候補生なのだ。
補欠で受かった者達でも、各領地に配属され、その地の警備及び衛兵として活躍していた。
たまに、貴族の魔族に勧誘されてお屋敷付き護衛官になる者もいる。
そんな学問の都に、イアンたちは再び訪れた。
今回は試験の視察などではなく、クリスの里帰りのためにやって来たのだ。
「なんか懐かしいです!この風景!まだ3年しか経っていないと言うのになんか変ですよねw」
「まぁ、クリスったらそんなにはしゃいじゃって」クスクスと笑うサラ。
「しょうがないんじゃね?まだ子供なんだし」ニヤニヤしながら眺めているイアンだった。
「僕子供じゃありません!もう16になったんですからね!?」
頬を膨らましながらイアンに抗議をし出した。
イアンとサラが、大陸の魔王と伝説の魔女だと知った時は、しばらく萎縮をしてはいたが、この二人がいつもと変わらず気さくに話しかけてき、自分の事をとても大事にしてくれ、兄弟の様に接してくれていたのでいつの間にか、師弟関係とか主従関係とか言う事をすっかり忘れてしまっていた。
クリスにとってのこの二人は、絶対的存在で、自分の命に代えても守らなければならない、そんな思いが強かった。
しかし、実際には守られているのは自分だという事もよく分かっていた。
二人の力には到底及ばないが、それでも自分が自分らしく生きる為には、サラとイアンに降りかかる火の粉はまず自分が先頭を切って排除する。
それがこの二人への最大の恩返しになることをよく知っていた。
そんなクリスの気持ちを理解していたので、クリスには好きなようにやらせていたのだった。
「クリスは先にお家の方に帰っていなさい。私達はデニマールの所に寄ってから行くから」
「サラ様たちが行くのでしたら僕もお供します!」
まぁwとクスクス笑いながら3人はデニマールに会いに行った。
「これはこれはいつぞやの旅のお方ではないですか」
馬車から勢いよく飛び降りて、駆け寄ってくるクリス。
「先生!ご無沙汰してます!クリスです。覚えていらっしゃいますか?!」
「クリス。大きくなったね。元気そうで安心したよ」
「はい!」
クリスは満面の笑みで嬉しそうに微笑んだ。
その後クリスは訓練場の方に居る昔の仲間の所に駆け寄って行ってしまった。
「そう言えば、あなた方が来た次の試験からあの子たちも試験が受けられるようになったんですよ。
何かいたしましたね?」
「さぁな、何の事だかな」
顔を見合いながら、二人の口角が少し上がる。
「そうそう、クリスより2つ上のヤンが先日の試験に合格したんですよ」
「まぁ、あの子が?それは良かったですわね。
ずいぶん強くなったんじゃありませんか?」
「はい。どこに配属されるか楽しみにしている様子でしたよ」
「へぇ~、あのガキがね・・・」
「イアン、まさか・・・」
「ん?面白そうな人材じゃね?」
「やっぱり・・・ハァ・・・」小さなため息をついた。
この3年、クリスを連れて旅をしていて時々思った事がある。
似たような年頃の友がクリスの側に居てくれればと。
自分の立場をよくわきまえているクリスは、サラとイアンに危害が及ばないかと、いつも気を張っている。
悩みがあったとしても、サラやイアンに打ち明けられるはずもなく、自分で処理をしようと常に自分自身を追い込んでいるようなものだ。
悩みを聞いてやろうとしても、その口は頑なにつむがれなかなか本心を言わない子だった。
それなら少しでも気心の知れてる者が、友として側に居たとしたら少しは気が休まるだろうとの考えだった。
クリスの家に向かう途中、馬車の中でサラがクリスに大きな布袋を渡した。
何が入っているのかずっしりと重かった。
「これは何ですか?」
「あなたの今までのお給金よ」
中を開けてみてみると、大量の金貨が入っていた。
「こ・・・こんなに沢山!?」
「そうね、でも、ちゃんと諸経費は引いてあるから」クスリと笑う。
「あなたお金なんてほとんど使わなかったでしょ?
毎月渡してたお小遣いだってその中からあげてたのよ?」
「でもこんなに沢山は貰えません・・・」
「なに言ってんだ、クリスが頑張ったから、今のお前の腕前なら王室付きの中隊長クラスなんだぞ。
それ相応の金だ。遠慮しないで貰っとけ」
「ありがとうございます・・・。」
クリスは喜びのあまり少し涙ぐんでしまった。
クリスの家に着くと、久しぶりに帰ってきた元気そうなクリスを見て皆喜んだ。
大きくなったな。とか、立派になったわね。とか口々に先を争う様に言い合っている。
そしてこの3年で溜めたお金をおじさん達に渡すと、腰が抜けるほど驚いていた。
「こんな大金いままで見たことがないわ・・・」
「本当だな・・・でもこれはお前が稼いだものだろ?お前の物だ」
「ううん。僕はいいんだ。持ってても使う事がないから」
「ですって。貰ってあげてください。クリスに必要なお金でしたら、月々ちゃんと渡してますから
心配はありませんよ。ねっ?クリス」
「はい!僕が稼いだお金を持って歩いてたら、馬車がそのうち潰れてしまいますw」
悪戯っぽく笑いながら言った。
それならばと、ありがたく頂戴する事になった一家だった。
その日はクリスの家に泊めてもらう事になり、イアンは朝早くに何処かに一人で出かけた。
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