ハナミズキ 2014-08-20 16:01:01 |
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旅にクリスが加わり、3人での旅となったこの御一行様は、王室を離れて早3年の月日が流れていた。
クリスが加わってからの旅も、そろそろ1年が経とうとしていた。
この1年の間で、クリスは随分成長をした。
ほろ馬車での移動中は、サラに国歴・各領主の名前及びその家系の歴史・貴族の名前及びその家系の歴史・薬学など、さまざまな学問を鬼の様に叩き込まれた。
イアンからは剣術及び魔術を、馬車から降りている時や実戦で叩き込まれた。
見た目は14歳ほどの子供なのだが、その腕前と知識はA級ランクの実力を備え付けられた。
A級ランクというのは、武官なら中隊クラスの大将で、文官であれば各省庁のNo3当たりと言ったところだろうか。
だが本人には全くその自覚がなく、二人の前では従順かつ忠実な弟子に徹していた。
日暮れまでに次の町まで到着する事が出来ず、今日は途中の山間で野宿をすることになった。
近くに川などはないが、自然を意のままに操れるサラには、そんな事は関係がなかった。
目をつむり両手を天にかかげて、呪文も唱えずただつぶやくだけ。
「水の粒子よ、我に集え」
そうつぶやくだけで空にはキラキラとした粒子が集まり、それを吸収したサラが入れ物に手をかざしただけで水が湧き出てくる、摩訶不思議な魔術だ。
火を起こすために使う小枝もそうだ。
イアンが片手でクイッと右から左に手首の先を動かすだけで、森の中に散らばっている小枝が手元にやってくる。
クリスとこの二人の決定的な違いは、呪文を使って魔術を行うかそれとも呪文なしで魔術を行うかの違いだった。
ただ、イアンの魔術の凄さは訓練をつけてもらい、実戦でも目の当たりにしているので物凄く尊敬をしていた。
しかし、サラは普段魔力をほとんど使わず、学問の師匠としては尊敬していたが、魔術が苦手な人だと思い込んでいた。
イアンも、いつもサラを守るように戦っていたので、クリスは何の疑いも持っていなかった。
二人の正体も明かされていなかったので、勝手な憶測で、言葉使いと学問の知識量から推理すると、どこかの貴族のお嬢様ではないかと思っていた。
イアンは、そのお嬢様に同行している護衛騎士ではないかと、勝手に推測をしていた。
辺りが暗くなり夜も更けってくると、大勢の人の気配が感じられた。
クリスとイアンがおもむろに立ち上がり戦闘態勢に入る。
気配からして2・30人は居そうだ。
この山一帯を根城にしている山賊の様だ。
それも魔族の山賊一味だった。
いきなり放たれる風塵かまいたちや雷弾、葉切刀などをかわしながら、確実に敵を倒していく。
本来ならこの程度の人数は1分もかからないのだが、クリスのための実践として、イアンはサラを守ることに徹し、戦闘そのものはクリスに任せていた。
たまにクリスが絶ち損じた敵をイアンが倒すという、そんな戦術だった。
万が一クリスが怪我をすれば、サラが治癒の術で手当てをしてくれる。
この1年でクリスが学んだ事は、戦闘魔法はイアンで、回復と補助系の魔法がサラだという事だった。
つまり、サラに戦闘能力がないと判断していたのだ。
ほぼクリス一人の戦闘でも、この程度の魔族なら10分もかからない。
あっという間に倒すと風に乗せて近くの町にある役所に送りつけた。
「腕を上げたな」
「もう立派な騎士ね」
二人に褒められたクリスは嬉しさを隠しきれず、満面の笑みを浮かべ飛び上がって喜んでいる。
意気揚々と次の町に到着をしたが、街に入るなりいきなり警備兵に呼び止められ、通行手形を見せるように言われ、手渡した。
「お前たちはどこから来た」
「それに書いてある通り、王都から参りました」
「そうか。では我々に同行してもらおう」
「何故ですか?理由を教えてください」
「理由など知らぬわ。王都からの通行人はすべて城に連れてこいとのご命令だ」
サラとイアンは顔を見合わせうなずく。
しかしクリスだけは、訳が分からずガタガタと震えていた。
こういう所はやはりまだ子供であった。
ほろ馬車を取り囲むかのように警備兵に囲まれ、3人は城へと連行されて行った。
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