ハナミズキ 2014-08-20 16:01:01 |
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防護壁の中にいた子供たちには、外の様子は見えるものの、外の音は遮断されており、イアンが呪文も唱えず魔術を使った事などは全く知る由もなかった。
ただ、魔術で警備兵隊たちの動きを止めて、サラが警備兵隊に話をしに行った。
そういう風にしか見えていなかった。
しかし、二人とも人間の気配程度にしか気を出していなかったので、先ほどの魔術もデニマールがやったものだと思い込んでいた。
次の日、武術と魔術の試験を見学し、魔王が来ると言う噂がただの噂であり、今回の試験を盛り上げて受験生の数を少しでも増やし、この町の経済効果を計ろうという趣旨だった。
そのおかげかどうかは分からないが、経済効果はもちろんの事、優秀な人材もいつもより多く現れていた。
しかし、こんな人騒がせな事はもうするなと、魔王であるイアンに、領主がきつく咎められたのは言うまでもない。
が、その反面、良く行き届いた教育の場を、身分に関係なく平等に与えていることに関しては、魔王直々に感謝の言葉を頂いたのである。
魔王に直に言葉を頂いたばかりか、いままで噂でしか聞いた事のなかった伝説の魔女にも会う事が出き、その美しさにしばし見とれるほどだった。
人前には決して姿を現さないその魔女が、いまはこの大陸の魔王様と一緒に行動をしている。
これは国民にとっても、臣下にとっても大変名誉な事である。
そして何よりこの二人、お互いを信頼し合っている姿がとてもお似合いに見えた。
すべての用事が終わり、二人はクリスを迎えに行った。
訓練所に行くとすでにクリスはそこに居た。
両親はすでに亡くなってはいたものの、親戚の人が面倒を見てくれていたのだ。
しかしその家も生活が苦しく、日々の食べるものにさえ事欠くような生活だった。
だが決してクリスを邪魔者扱いをせず、我が子同然の愛情を注いでくれていた、そんな感情がサラとイアンに流れてきた。
クリスの資質をみいだし、共に旅に行こうと声をかけてくれた二人だったが、その二人の素性がまったく分からない事に不安を隠しきれていない保護者の気持ちも二人には流れてきた。
「あの、二人にお話があるんですが、ちょっといいですか?」
サラは少しでも不安を取り除いてあげようと、この保護者には本当の事を打ち明ける決心をした。
保護者二人とイアンを連れて別室に行き、自分たちの旅の目的とクリスを同行させる目的を話した。
当然のことながら保護者達は腰を抜かさんばかりに驚き、勿体ない勿体ない、ありがとうございますと、何度も何度もお礼を言い涙ぐんでいた。
定期的に連絡を入れる事と、クリスが一人前の働きをするようになったら、それに見合う賃金を払う事を約束し、3人はほろ馬車に乗り込みこの地を後にした。
そして新たに3人での旅が始まったのである。
―― つづく ――
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