ハナミズキ 2014-08-20 16:01:01 |
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いつもと違うクリスの様子に気が付いた、同じ訓練生でもあり、同じ集落の子供たちが集まってきた。
「なんかあったのか?クリス」
クリスは嬉しそうに
「僕ね、この方たちと一緒に旅に同行することになったんだ!」
集まってきた子供たちは、サラとイアンを間近に見て、それぞれが顔を朱色に染めた。
「なんでクリスなんだ?!クリスより俺の方が強いのに!」
そう言ったのは集落一番のガキ大将ヤンだった。
ヤンはいかに自分の方が強いか、自分には才能があるかを語り始めた。
ヤンに限らず、ここに居る者たちはみな、武官や警備隊などのきちんとした職業につき、家族のために働きたいと思っている。
欲を言えば、どこかのお屋敷の警備や護衛武官として名をはせたいとも思っていた。
だが、いきなりそんな所に勤められるわけもなく、始めは何処かのお店などで用心棒として働き、その働きを認められヘッドハンティングされる日を夢見ているのだった。
お店の用心棒にしても、まだ年端もいかない子供を雇うはずもなく、いまはただひたすらに腕を磨くべく精進するしかなかったのだ。
それなのに、この訓練所に入ってまだ半年のクリスが、いきなり現れた旅の二人連れに用心棒として雇われたとなっては、ヤンや他の子供たちも面白くはないはずだ。
「クリスはこの訓練所に来てまだ半年だぜ?こんな奴が用心棒なんか勤まるはずないぜ!
どうせなら俺にしときなよ、旅の人」
「ごめんね。クリスは用心棒に雇ったんじゃないのよ?」
「はぁ?!じゃあ、なんで連れて行くんだよ」
そうだそうだと子供たちがまくしたてる。
「クリスの将来を見越して連れて行くのよ?
この子ならきっと、将来優秀な武官になれるわ。
それに、イアンの片腕にもね」
クスリと笑いながらクリスの頭を撫でるのだった。
頭を撫でられたクリスは、顔を紅くしうつむいて困った顔をしている。
その時、門の方から爆音とともに黒い煙が上がった。
何事かと駆け寄ってみると、いかにも人相の悪そうな5人組が次々にこの訓練所を破壊し始めた。
子供たちの話によると、元々あったもう一軒の訓練所の館長が雇った人たちで、いままではそこに入門する人がほとんどだったが、そこの訓練所は、ノルマが達成できないと厳しい罰を与えられ、無料で教えてくれるのはいいが、そこを出て就職をしたのち、多大な寄付金と称しお金を毎月請求されるという。
教えてもらったその礼金というわけだ。
そこに対し、ここは礼金など一切受け取らず、その者の魔力に合った術を丁寧に指導してくれる。
そしてその能力を最大限伸ばしてくれる。
そんな噂が噂を呼んで、向こうから移ってくる人たちが増えたという。
それを逆恨みして、度々この様な嫌がらせを仕掛けてくるというわけだった。
館長のデニマールが一人で応戦していたが、今日は向こうに一人、結構な魔術使いがいるようだ。
デニマール一人では応戦しきれてはいなかった。
子供たちは怯え、泣き出す子も現れた。
「イアン・・・助けてあげて」
「了解!」
にやりと笑い駆け出す。
「あ・・・イアン!手加減はしなさいよ!」
「わかってるって」
サラは木の枝で子供たちを囲むように大きな円を描いた。
「みんな、この円から出てはダメよ?
この円の中にいれば安全だから、絶対に出ないようにね」
そう言って子供たちを自分のそばに呼び寄せ、抱きしめる。
イアンの参戦によりあっという間に片が付いたが、何故か警備兵隊たちが大勢押しかけてきた。
不法侵入及び、爆破破壊の犯人たちを取り押さえるためではなく、狙いはデニマール達の方だった。
イアンは警備兵隊たちに捕縛の術をかけ拘束した。
呪文も唱えず捕縛の術をかけたので、みな一体何が起こっているのかさえ分からない様子だ。
サラは防護壁で守られている円の外に出て、警備隊長に尋ねる。
「これはいったい何事ですか?」
「きさまら!いったい何をした!」
「聞いてるのはこちらですよ?
私の質問に答えてくれなければ、捕縛は解きません」
「ほ・・・捕縛だと?!呪文も唱えず捕縛などできるはずがない!
嘘を言うな!」
「あら・・・あなたは知らないのかしら?呪文を唱えず術をかけられる者がこの世に二人いる事を」
「はぁっ?!・・・そんな事出来る者と言えば、魔王様と伝せ・・・つ・・・」
何かを感じ取ったのか警備隊長の顔が見る見るうちに青ざめていく。
「ピンポーン♪正解。」
あわあわと慌てふためく警備隊長。
「で?誰に何を言われてここに来たのかしら?」
笑顔で問いながら右手で警備隊長のおでこに触れる。
サラに触れられた警備隊長は、顔面蒼白を通り越して今にも倒れそうな勢いだ。
それもそのはず、普段は気配を人間並みに抑えてはいるが、サラの采配ひとつで、サラが触れた者に対してだけその莫大な気を、全身に流れ込ませることができる。
流れ込まされた気に、ほんの少し力を加えただけで、その本体は一瞬にして消し去られてしまう程の
強い気だ。
気の強さは、魔族なら本能的に理解できる。
「・・・尚武館・・の・・・館長に・・・ここで子供の売・・り・・買いを・・・してると・・・」
ガクガクと震えながら話しだした。
話し終わるとサラは、イアンに捕縛を解くように言うと目をつむり静かにほほ笑んだ。
その直後、西の方角から物凄い爆音と黒い煙が上がったかと思うと、先ほど壊された門や屋敷が綺麗に元通りに戻っている。
「・・・・サラ・・・、やった?」
イアンが恐る恐る聞く。
「ん?人聞きの悪い事言わないでよね・・・ちょっと取り替えっこしただけじゃない」
ぷくぅっと少し膨れたように舌をペロッと出して笑った。
『容赦ねぇよな・・・この人は・・・』と思いながらはにかむイアンだった。
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