▽▲▽▲ 2014-08-18 14:57:42 |
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(/はい、それでは此方も失礼します!)
( 姉が語った自分の恋人は、少し口が悪いけど心配性で、不器用なだけのとっても優しい人なんだそう。そんな俺の見知らぬ誰かを思い浮かべながらぽつぽつと言葉を紡ぎ、小さく微笑んだ姉の横顔は今でも忘れられない。そんな彼女と様々な光景を見送り共に重ねてきたのは俺だったけど、その役目が「恋人」に代わってしまってからは少し寂しさを抱いていた。しかしだからこそ、彼女には和やかな時間を、日々を、季節を、一年一年を、温温と暮らしていてほしかった。――叶う事の無い、遠い日に見たそんな夢。姉が死を彷徨っているなんて信じたくなくて救急車で運ばれた先の病院へ頑なに一度も訪れなかった俺は、雨が降りしきる中行われた葬式の日、棺に入った姉を目の当たりにして初めて「死」と向き合った。死人はまるで眠るようだと言ったのはどこの誰だったか、安っぽいドラマでそんな台詞を聞いたことがある。だけどそんなのは嘘っぱちで、瞼に覆われ二度と開く事のないその双眸はとても「眠っているよう」だなんて形容できるものではなかった。それくらい俺はただ一心に、軽薄な嘘でもいいから姉を返してくれ、なんて願い続けていた。 )
―――アンタ、それ俺の目見て言えんの
( 無愛想に此方を一瞥したかと思えば、ばつが悪そうにふいっと視線を逸らし腕を振り解いた彼。そんな態度と先程の涙はどうも結びつかなくて、完全に煮え切らないような困惑交じりの苛立ちを露わに俺は上記の台詞を投げかけ。――このままでは堂々巡りだ。だけど易々と見逃すわけにもいかなくて、俺は彼の腕をもう一度掴むと少し強引に引き寄せて。「俺の問いに対してお前がなんと答えようが、俺はお前を逃がさない」。そんな意を込めた鋭い視線で彼を射抜けば、「別に今日は恨み晴らしに殺しに来ましたとかじゃねーから」なんて冗談にしてはいささかヘビーな台詞を口にし首を軽くすくめると、やはり鋭い双眸はそのまま彼の出方を窺うように見つめ続け。 )
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