[黒籠]ふるはな[7×4]

足の踏み場があるだけマシだけどな…そうしとけよ
(何を注ぐか考えるのが面倒で適当に麦茶でいいかとグラスに氷の麦茶を注ぎテーブルの方へ持っていきながら､昔見たテレビで足の踏み場がないほど汚かった家を見た事がありあれは人が住めるものじゃない､と片付けるという相手に頷いて。二つのグラスをテーブルに置けば相手の置いた荷物が目に入り邪魔にならないよう壁際へ寄せてから先にソファへ座りテレビを操作する相手を眺め)

(/十分お上手ですよ！
そうですね！それではこれから宜しくお願いいたします！)

あぁ、了解した。…DVDまで予告入れる必要ないと思わないか。
(相手は足場の踏み場もないほどに汚い家を見たことがあるのだろうか、と不思議に思いつつ頷き。リモコンを持ったまま相手の隣へと座れば長々と映画の予告が流れる画面を見つめては映画館ならまだしも、家で見るときまで入れられては早く見たい自分にとってあまり都合のいいものではなくて。操作不能とわかっていながらも早送りのボタンを押してみて、”操作できません”と表示されれば二人のあいだにリモコンを置き。

(/そう言っていただけて感激です…!!
こちらこそ!これからよろしくお願いしますね!

少なくても飛ばせるようにしてもらいてぇもんだな
(”操作できません”と表示されたテレビを見て舌打ちをし､興味のある映画の予告が入っていることもあり入れる必要がないとは思わないが､今見てるDVDの予約は興味のわくようなものは全くなく､さらに長ったらしく流されればウンザリもする､とこういう時に早送りが出来ないのは不便だと頷いて。普段この時間は本を読んで潰しているため何もしないで予告をずっと見るのも退屈であり小さく溜息をつき)

(/いえいえ！それではこちらも背後はこの辺りで失礼しますね！)

全くだな…もうすぐ始まってくれればいいんだが
(自分も全く同じ気持ちであり、その言葉にこくりと頷き。そのままソファの背もたれに体を預けため息をついて後記返すとちらりと相手に視線を向け、溜息をつくその横顔からは退屈だという表情が読み取れて。もう始まるのだろうが、やはり相手の退屈な顔は落ち着かないもので、しばし考えるように天井を見上げるとバッグの中の土産のチョコを取り出し相手にに差し出し。

(/はい!ではでは私もここら辺で…!!

あぁ､こうも長くつうか多く､入れる必要はねぇよな
(DVDの予告ぐらい２､３こにしてくれればいいものを､意識を別のものに向けられればいいが本編が始まるまでの間に萎えるような気もし。先程と変わらず退屈そうな顔でいつ本編が始まるかも分からないテレビを眺めていたがふと､相手がこの間何をしているのかが気になり､何やら隣で何かしているのを視界の端で捉え顔を向ければ目の前に差し出されたチョコに､突然すぎて一瞬驚きはしたものの礼を言いながら受け取って､そのパッケージに書かれてるのがカカオ１００％なのを見て満足げな顔をし)

…でももう終わるみたいだ。ようやく本編らしいな
(長かった予告もようやく終わるらしく、もう何本の予告を見たのだろう、と目を擦り。となりの相手が満足気な顔を浮かべるとその表情をカメラに収めようか、と一人葛藤し携帯に手を伸ばしかけるもこの空間を崩してはなるものか、と思い直しぐっと抑え再び画面に向き直り上記述べて画面へと集中し。既に予告だけでお腹いっぱいになってしまったもののやはり始まってしまえばすぐに画面へと見入ってしまい。

…みたいだな
(相手にいわれ視線を手元のチョコからテレビ画面へと移すと､いつの間にか予告は終っていて。ようやくかと画面を見ながらチョコの銀紙を剥ぎ､ﾊﾟｷﾝといい音を鳴らし1欠けを歯で割り。自身が見てきた映画の中で好きな作家の小説が映画化されたのはいくつかあるが､見てよかった作品だけではなく中には何故映画にしたのか問いたくなる作品もあり､これはそうでなければいいと画面の方に集中し)

……いや、花宮のほうが綺麗だな
(相手が読んでいた本が原作だからという先入観だろうか、それとも本当の事なのかはうまく判断できないが、個人的にはセンスが良い映画だなと相手がチョコを割る音を隣で聞きながら画面を見つめ。最近メディアの露出も多く話題になっているらしい美人女優が画面に映し出されれば相手を横目で見て無表情ながらもどこか勝ち誇ったような顔で意味もなく手を組み誰に言うでもなくそう呟き。

…………は？てめぇふざけてんのか､まず比べる対象がおかしいだろうが！男と女を比べんじゃねぇよバァカ！
(中々いいセンスとクオリティにこれは期待できそうだと思いながら､画面に映し出された世間から見れば美人だと騒がれるだろう女優を､化粧で隠してるなとかもう少し薄い方が好みだなど内心ボロクソ言い挙句の果てにはこいつよりこっちの方が合うのではと頭に浮かんだ女優を画面に移る女優と置き換え頷くも､隣から聞こえた呟きにスルーしそうになったが女性より綺麗だと言われ喜ぶような男ではなく相手を睨むように見ると､どう見れば自身の方が綺麗に見えるのかとまだ画面に映っている女優を指差して)

…?関係ないな、花宮も花を見ると綺麗だと思うだろう?それに…天使は無性別らしい
(組んだ腕を解き心底不思議そうに首を傾げ画面の中の女優と相手を代わる代わる数回見比べて、男性と比べたとしても女性と比べたとしても自分の中では変わらず一番綺麗な存在である彼に自論を述べて。しばし間を空けて相手の肩にポン、と手を乗せればこの場に他人がいたら、否他人がいなくとも確実に引かれるであろう部類の言葉を無表情で言い放ち。ふと何かに気が付いたように再び画面を見つめると自分の一番は変わらないとしても相手とはまるで違う雰囲気の女性であり、なるほど系統が違うのか、とぽつり呟き。

…まぁ、思わなくもねぇが…っておい何処から天使がどうこうっつう話になったんだよ！
(実際道端に咲いている花を見る度綺麗だと思うかといえば否なのだが、そういう目線で見れば綺麗だとも思うわけで頷いて。しかしそうであっても女性と男性を比べ男性の方が綺麗に見えるのはどうなのかと呆れた目で見て。再び目線を画面の方へ戻そうとするもその前に肩に手を置かれ訝しむよう相手を見ては言われた内容にどん引くような目で見るも何故いきなり話がそうなったのかが分からずに。系統以前に性別が違うことに気付けよと相手の呟きを聞き口に出すと面倒な事になる気もした為口には出さず内心呟き)

だろう?それと同じだ。…花宮、その目はやめてくれ、何かに目覚めそうだ
(つまりは性別等は自分の中ではさほど重要ではないと言いたかったらしく頷いた相手を見ると呆れられているにも関わらず満足したかのように目を細めて。何処かの本で天使が堕天して悪魔になったという話を読んだのを思い出し、それなら悪魔でも合うのだろうかと一人思案している途中相手の視線に気がつき一気に思考は止まり別の方向へと暴走しそうになるも流石にその道に足を踏み外すのは自分でもいかがなものかと思い手で目を覆うと視線背け。

お前にとって花と人間は同一かよ。……お前…さすがに引くぞ。
(頷いたのはあくまで花を綺麗だと思うかとの問いに頷いただけであり､花と比べるのはやはり理解出来ず､満足したような相手をジトリと見て。前々から相手が自身に対し異常なのは気づいていたものの害はなかったためあえて触れていなかったが､どん引いた目で見たにも関わらず目覚めるという発言をした相手からｻｻｯとソファの端へと逃げるよう距離を取って)

綺麗なもの、という点では一緒だと思って…。ま、待ってくれ花宮!まだ目覚めていない!まだ!
(同一か、と聞かれれば一概にはそうとは言えず、かといって否定すれば先程の発言の説得力は無くなってしまうと返すも相手の視線に少しずつ声は小さくなってゆき。距離を取られると流石に焦り始めどうにか弁解しようとして、少しだけ距離を詰めると必死そうな表情でどうにか誤解を解こうとあまり言い訳にしてはあまり向いていない言い訳をして。

綺麗､ねぇ……まぁ他人の感性なんて知ったこっちゃねぇし､お前にとってはそうなんだと認識しとくわ。まだって二度も言うんじゃねぇよバァカ！全く安心出来ねぇんだよ！
(相手の様子が少しずつ変わっていったのに僅かに視線を逸らし多少の間を空ければ､小さな溜息と共に綺麗って言われても嬉かねぇけどと呟きつつも相手をﾌｫﾛｰするかのように述べ。相手が誤解を解こうと必死なのは分かるがあまりの焦り様と必死さに顔を引き攣らせては､まだと主張するように二度言った事にこれから先目覚める事があるのかと思うと安心出来ず)

そういう認識してくれると助かる。…ふむ、綺麗というのは好まないのか、なるほど。正直花宮が罵りたいのなら全て受け入れるつもりだったが引かれるとは思ってなかった!
(フォローをしてくれる相手に案外こういう所もあるのだと少し嬉しく思いつつ安堵したように相手に視線戻し。相手が呟いた言葉を聞くと顎に手を当てて他の言葉で表現できるだろうかと思案し始め。どうやら相手の言動からさらにまずいことを口にしてしまったらしい事を察すると焦りつつも考え続け、ハッ、としたように顔を上げると引かれるなどという事は一切考えていないようで、そう返し。

好む男の方が少ねぇだろ。てめぇそこまで暴露しておいて何が引かれるとは思ってなかった！だよ！
(ﾌﾝと鼻をならし視線を戻した相手とは逆に相手から視線を逸らし。何か思案している相手を見ているも､自身が男だから綺麗だと言われたくなかったのだが女だったなら喜んでいたのだろうかと考えるとそうとも思えず分っかんねぇなと呟き。あまりにも堂々とした言い様にマジでそう思っていたのかと疑いの目を向けつつ､まるで自分が相手を罵りたいと思っているような言い方に眉を寄せ)

花宮の事を表現するのに適した言葉というものがなかなか思いつかなくてだな…。す、すまない…いや、それはその…!
(あくまでも自分から見た相手の事だという事はいくら相手の事をずっと見ている自分でも分かっており、可愛いとも格好良いとも違う相手の魅力を表す言葉はなかなか見つからず、それは普段人を褒める事がほとんどない自分からしてみれば更に難しいことで。本当にそう思っていたのか、と聞かれれば完全にその場で口から出た出任せでしどろもどろになってしまい、こんな姿を見せればもう相手には完全にバレてしまっているだろうと半ば諦め。

…何でお前そんなん考えてるんだよ。確かに綺麗と言うなとは言ったが…。………ﾊｧ､お前隠し事すんの苦手だろ､ついでに誤魔化すのも下手
(自分を表現する言葉というのは中々興味深く､確かに相手を一言で表現しろと言われると中々思い浮かばず成程と頷くも､そういえば何故こういう話になったのかと思い最初は普通に会話していた筈だがと相手が来た辺りから振り返ってみると大体綺麗だと言われた辺りから会話がおかしくなったような気もし､そもそも何故別の言葉で表現しようとしてるのかと尋ねてみて。相手のしどろもどろな様子から大体が分かってしまい深く長い溜息をつけば呆れたような顔をし)

俺はいつも考えている、今回は女優を見てつい…というか。…花宮に嘘をつくのは苦手だ、他の奴ならまだ上手くつけると思う。
(考えても考えても答えが出ないのは自分の語彙が少ないからだろう。そう分かってはいたもののどうしても相手に伝えたかったらしく。普段は言えないからいいタイミングだと思ったのだがやはり難しいな、と実感すると言葉をより知るために今度から相手のように本を読んでみようかとも考えはじめ。試合中や日常の何も知らないふりをする事や隠し事をする事はあるのだが、相手を目の前にしてその目を見るとどうしても相手には嘘をついてはいけないという思いが大きくなってしまって。呆れられつつ申し訳なさそうに視線を下げると。