青葉 2013-10-19 22:21:19 |
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心の中で質問調に考えたわけではないが、
「無論、ここを記憶している者のですよ。」
と、老紳士は答えた。
この過去のリビングを細部まで記憶しているのは青葉の家族と考えていいだろう。
この状態のリビングは10年くらい前だろうと思う。
この家はその頃、父、母、姉、そして青葉の四人で住んでいた。
さて、誰だろう。
青葉ではないような気がする。10年前のこのリビングを懐かしく思うが、特別な思い入れはない。
「あなたではありませんよ。現在のこの部屋を毎日見ているのですから、10年前の部屋を再現はできません。あなたが再現したら、この部屋は過去と現在の物がごちゃ混ぜになります。記憶なんて、そんなものでしょう?」
なるほど。そうかもしれない、と思う。
では、姉が最有力だろう。
10年も前ではないが、結婚して一番最初に家を出ている。
父母も訳があって家を出たが、まだ3年前だし、近くに住んでいるのでこの部屋がどんな状態であるかはよく知っている。だから家族の中で姉が最も過去の部屋を記憶に残しているはずだ。
「そうでしょうか。10年ではないにしても、そうとう歳月が経っているのですよ。人は部屋がどうだったかなんて忘れます。だいたい、あなたは細部まで部屋を記憶している、と考えてましたが、どうして細部までと言えるのです。記憶はあなたが考えているより曖昧なんですよ。」
老紳士は青葉が考えていること全てが分かるようだ。
青葉ではなく、姉ではなく、父母でもない。そう老紳士は言っている。
『そうなると思い当たりません。』
家族以外にこの部屋を記憶している者などいるだろうか。
「誰か忘れていませんか?まあ、忘れているからこそ、私はここに来ようと思ったのですが。」
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