語り手 2013-09-29 20:27:33 |
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そう。貴方の名前を教えて欲しいんです。
(名前を教える事を躊躇う彼の声は先程よりトーンが下がった気がした。此処に来て流れる沈黙に耐え切れずふと自ら彼に視線を移しては、暗闇で確信は出来ないが先程まで不自然な程に浮かべていた笑みが消えた。目を見張り次に紡がれる言葉を待っていれば彼の口から零れたのは予想外の言葉で瞬きを繰り返す。"内緒"と言っただろうか。バンッと床に両手を付き体を前に乗り出し「教えてください。」自分でも吃驚する程真剣な声色で述べた。純粋に彼の名前が知りたいと思った。が、突然此の様な事を言っても何故他人の名前を真剣に問うものかと笑われてしまうだろう。態とらしく咳払いを1つ、身を引いて元の体制に戻れば沈黙の中雨音に耳を澄ます。すると途端に立ち上がり自分の前にしゃがむ彼を真っ直ぐ見詰める。差し出された林檎を咄嗟に受け取っては笑みを浮かべ「ね、私が此れを食べてる間貴方の事を話してくれませんか?」我乍ナイスアイディアだ。自分が食べている間此方は話せないのだから彼に話して貰えば良い。林檎に対しては何の警戒心も持たず手元の赤色を見詰め次の言葉を待った。)
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