永嶺 響祐 2013-06-19 21:48:38 |
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*○ストーリー○*
思えば、俺は常に人に囲まれていた。
“友達”と称して、“恋人”と称して、“優しさ”と称して──
全部、悪いのは俺だけど。
俺の家は所謂資産家と言う奴だった。
お陰で餓鬼の時から有り余る金でくだらない好き勝手やってきた訳だけど、その時は未だ俺の周りに居る奴らは全員友達だと思ってた。
それが違うって気付いたのは何時だろうな、覚えてねぇけど驚く程虚しくて、驚く程冷静だった。
──此奴らが欲しいのは俺との関係じゃない。金なんだ、と──
なら其れを撒き散らせば俺は今まで以上に好き勝手が出来る。
大人だって動かせる。
なんて、馬鹿な事を考えて荒れてた時期もあったな。
でも違った。
何をしたってあの時と変わらない、虚しいだけだ。
俺の周りには何時だって、何も無かったんだもんな。
両親は毎日何かと忙しくて出掛けるのは早朝、帰って来るのは夜中。
顔を合わせる事なんか滅多に無いし、兄弟も居ないから家で見掛けるのは家政婦だけ。
本当は、寂しかったのかもしれない。
お前みたいな奴に一番、傍に居て欲しかったのかもしれない──
高校三年になって間も無い頃、お前に出会った。
明るくて素直で単純で、優しくて、俺とは正反対な奴。
けど俺は、その優しささえ信じる事は出来なかった。
何かと俺に構って来るし、どうせ金目当てなんだろうと思ってた。
気付いたらお前の隣で笑えてる自分に気付かない侭。
好きだと言われたのは、夏だった。
あの時、何を思ったのかなんて分からない。
唯、俺は必死に自分に言い聞かせていた。
『此奴が欲しいのは俺じゃない、金なんだ』と。
お前の真っ直ぐすぎる気持ちが怖くて、逃げた。
動揺の侭にお前を傷付けた。
「んなに俺の事が好きなら、くれてやるよ。お目の望む事をしてやる。俺の暇潰しとして、な」
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