ヒビヤ 2012-08-22 00:19:39 |
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■VSヘッドノック
■8月16日 15:00 『実験都市』内『研究施設』 キド
俺達六人は無事『現実世界』に躍り出て、着地した。
何が起こるか分からないので、その瞬間に、こちらから勝手に、
『コノハ』、『ヒビヤ』、『ヒヨリ』の三人を、『メカクシ団』として『認定』する。
相手に拒否の意志がなければ『認定』に『条件』はない。
これでこの場にいる全員が俺の『サーチ』と『オーダー』の領域の中に入った。
『目的』は達したのだから、後は『逃亡』を図るだけ。
しかし『最悪のタイミング』でこそ、ソイツは現れる。
出来れば避けたかった『邂逅』。
しかし、どこかで『対決』しなければならないと分かっていた『男』。
ソイツは、
「まさか、『実験対象』を二人も盗んでおいて、本当に逃げ切れるとは想っていまいな?」
と言いながら、『人造人間兵士団30人』を連れて、『研究室』に入り込んできた。
ヘッドノック。『白旗先進科学技術集団』、『白衣の科学者』の長、
『実験都市及び終末実験』の企画立案者。考えうる限り、『最低』、『最悪』の男。
「捻り上げろ!」
ヘッドノックが手を振り上げると、一斉に『兵士団』が掛かってこようとする。
彼らと『真正面』から『戦闘』すれば『メカクシ団の敗北』は必定だ。
だからその前に――その『心理的優位』の不意を付く!
「エネ! マリー! トガ!」
私は端的に『オーダー』を飛ばす。
瞬間的な『能力の発動』を、ジャンが側にいて、サポートしてくれた。
「トガ! 私の入ってるスマートフォンを掲げて!」
「こうか?!」
「充分! さあさあ、とくと御覧じろ! 『皆、私の事を見ろぉ』!」
エネの入ったスマートフォンから『指向性の電磁波』が周囲に放たれる。
『非情に不快かつ有害』なそれは、否応なしに『兵士団』の『意識と視線』を『蒐集』した。
これこそが『コレクト』。『電脳体』としてのエネの『能力』だ。
そして、
「皆さん、固まって下さい!」
何故か敵に対しても敬語なマリーが、その視線を正面から受ける。『石化の魔眼』。
本家メドゥーサから見ると丁度威力も『クォーター』(4分の1)であるそれも、
しかし、『兵士団30人』の内、『25人』をたちまち戦闘不能にした。
残りの5人の意識を、戸惑っている内に『私とカノ』で落とした。
「どうだ……ヘッドノック……お前は『個人』でなら、最早恐れるに足りない!」
「それはどうかな……? 『メカクシ団』の『団長』……。
『科学者』が非力というのは、やはり『科学』を知らない人間の幻想に過ぎないのだよ!」
ヘッドノックは『小型化』された『k-07』を『6個同時に』投擲した。
「はあ……?!」
一瞬、フェイクかと想ったが、どう考えても本物だった。上手く思考が回らない。
『小型版』とはいえ、『実験都市』を丸々壊滅させた爆弾だぞ?! 『自爆』する気か?!
瞬間、エネの思考が割り込んでくる。
『オーダー』による『メカクシ団』の仲間への『思考収集』。
(キド! k-07には爆風圏内にも『死角』が存在している!
ヘッドノックは『6個』全部の『死角』に自分だけが入るようにk-07を投擲したのよ!)
(そんな無茶な! 何て頭だよ、それ! 『エネ』、他に『死角』はないのか!?)
(無理なの……!! k-07の爆風圏内の『死角』データは私は保持してる。
でも、投擲による位置がバラバラ過ぎて演算出来ない!)
瞬間に交わされる思考のやり取りは0.5秒にも満たなかった。
しかし、『打開策』は得られず、この瞬間にも『死の渦』はその爆風を今にも展開させようとする。
「エネ! 俺に『k-07』のデータを見せろ!」
『オーダー』の能力により、トガの頭脳が限界を越えて回転し、
『爆弾』の描く『放物線』から『着地地点』を割り出し、そこから、
『k-07』の6個分の『爆風圏内』と『死角』を計算する様を、俺は見ていた。
「お前には見えないだろうが……俺には既に『答え』が視えた」
「御託は良いから!」
ビシリとヘッドノックを指さしながら言うトガに、俺はすかさず突っ込んだ。時間がない!
俺は『トガの脳内』にある『k-07計6個の死角』のデータを
『メカクシ団全員の脳内』に『オーダー』した。
まるで、転がるように『団員全員』が動き回り、僅か二箇所の『死角』に身を寄せ合う。
『死の渦』が展開。『爆風』と『風の刃』が撒き散らされる。
本来なら『死角』にいても相応のダメージがある筈だが、
『自らを傷めない』ように『改良』したのが『死角』内では殆ど傷を負う事はなかった。
流石に目を見開き驚愕した風のヘッドノックに、エネが宣誓するように断言した。
「私達の心は『繋がって』いる!
人の心と身体を弄んできた『独り』のあなたが、私達に勝てる筈がないのよ!」
「何を非合理的な事を……」
「いい加減、降参しなさいよ!」
ヘッドノックに追い打ちを掛けるように、『C』の『ブラインド』が発動する。
『ブラインド』の効力は『対象者数秒間の失明』。文字通り『視力を奪う』。
「目がァ……私の『目』がァ……」
やはり、『科学者』の中では『視覚』は一番重要な五感なのか、
情けなく呻くヘッドノックの背後に『ヤツ』はいた。
そう。誰が予想出来るだろう――『k-07』の『死角』は正確には『二箇所』ではなかった。
『三箇所』だ。しかし、普通の神経ではそこは選択出来ない。
『三箇所』目の死角とは『ヘッドノック』の背後だ。
あの爆弾破裂の瀬戸際において、それでも余裕綽々と、
『ヘッドノック』の後ろを取った馬鹿がいた。
その馬鹿は、事もあろうに、俺がリーダーを務める『メカクシ団』の『副リーダー』をやっている。
――その名前を『カノ』。
お気楽な『馬鹿』は、人の目を『欺き』、奇想天外な『発想』で、人の予想を『凌駕』する――。
「ヘッドノック! 後方不注意だ! 意識散漫ってヤツだね!」
巫山戯た台詞を吐きながら、カノは思いっ切り、
その組んだ手をヘッドノックの後頭部に振り下ろす。
俺は豹のように疾駆し、ぐらりと前方に倒れる勢いを『カウンター』気味に利用して、
ヘッドノックの顎を思い切り拳で振り抜いた。
凄まじい勢いで激突した拳は、ヘッドノックの身体を三回転半の『錐揉み回転』を加えつつ、
背後にいたカノを巻き込んでぶっ飛ばした。
「お前だけは、俺が殴り飛ばさなきゃ気が済まなかったんでな」
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