メカクシ

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ヒビヤ  2012-08-22 00:19:39 
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まぁ・・・暇だったら・・・読んでよ・・・

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  • No.6 by ヒビヤ  2012-08-22 01:47:43 

Cから少し遅れて、『ヒビヤが生きている事が確定した』、
『可能性世界』33000周目に入り込んだ、俺『キド』の率いるメカクシ団。
 しかし、『ヒビヤ』に格好付けたのは良いが、これはなかなかに多勢に無勢だ。
 今や俺達は100を越える複数の『陽炎』に『ヒビヤとヒヨリ』を中心にして、
包囲されている形になった。
全方位を守らなければいけないので、俺達は連携を崩され、
俺は持ち前の格闘で一体一体『陽炎』を打ち倒し、
カノの『トリックアート』はどうやら『陽炎』にも有効であるようで、
死角から『陽炎』の急所らしき場所を狙う。
マリーはちょこまかと動き回りながら(そして時折コケながら)
『陽炎』一体一体と『目を合わせ』石化していた。
ジャンもあまり切れはないが『田舎流喧嘩術』のような物を駆使して、『陽炎』とやり合っている。
 やはり、多勢に無勢。
 俺達が『陽炎』を消失させても、『あの目』の周りには次々と『陽炎』が湧き上がってきやがる。
 俺が苦々しい物を噛み締めていた時、更に絶望的な報告がトガから入った。
「エネが……エネが!」
「すいま……せ……皆さん、『あの目』に『可能せ…………コントロ……奪わ…………」
 ノイズと共に通信が切れ、同時に『あの目』がこれ以上ない程に残虐に顔を歪める。
 現時点まで、『メカクシ団』に、『陽炎によるループ』で何万回も
『ヒビヤとヒヨリ』に与えられていたような『死の宣告』が為されなかった理由は、
ただ『エネ』が『可能性世界』の『コントロール』を奪っていたからだ。
つまり『可能性世界』での『あの目の権限』を『制限』していた形になる。
『エネ』が『あの目』に逆に侵食され『コントロールを奪い返された』今、
『メカクシ団』を『死の宣告』から守る物は何もない。

 ――そして『あの目』は一度指を鳴らし――。


 まず、メカクシ団団長『キド』が何もない上空から現れた『工事現場の資材』、
その限りなく鋭利な先端を垂直に頭蓋に受け、まるで魚に串が通されるように、
そのまま背骨の方向まで突き抜けた。――即死。
 次に『カノ』の頭から5メートル程離れた位置に、魔法のように拳銃が出現。
誰もいないのに勝手にその引き金が弾かれ、螺旋する射出弾は、カノの脳髄を辺りに撒き散らした。
――即死。
 続いて、『ジャン』と『マリー』へと、突然、2トン車トラックが横転しながら突っ込み、
二人は為す術もなくハエ叩きに叩かれた虫のように圧迫され、肉塊のペーストになった。
――両者とも確実に即死。

 ヒビヤは必死に嘔吐を堪えながら、目の前で『正義の味方』の生命が散っていく瞬間を、
絶望的な面持ちで見守っていた。

 そして、『あの目』の魔の手が遂に、『ヒビヤとヒヨリ』に伸びようとした所で、
本当の『真打ち』が登場する。

 その性格上の都合から、いつも『出遅れる』彼は――。

「今度こそ誰も、終わらせない」

決意に満ちた言葉を吐いた。
 ヒビヤはその名前を知ろう筈がない。ついさっき会ったばかりなのだ。
それまで『可能性世界』内ではヒビヤは『彼』の事を物理的に観測する術がなかった。
 しかし、ヒビヤは天啓のように頭に沸いたその名前を、ただ一言呟いた。

「コノハ?」

「そうだ、ヒビヤ。私はコノハ。

 本当に遅くなってしまったけれど――今度こそ君たちを、助けるから」

 コノハが『何か』を握り締めるような動作をする。瞬間、『可能性は選択』され、
キド、カノ、ジャン、マリーの四人が復元した。
一度殺された彼らの心象は『なに今の』という
カノの端的な吐きそうになっている言葉が表していたが、
それでも彼らも『コノハ』の出現を歓迎する。

「――遅すぎだぞ、お前。『重役出勤』にも程がある」

「ごめん。でも、今度こそ私が終わらせる」

 コノハが周囲を手で払うような動作をする。
『可能性創造』によって造り出された『陽炎』がコノハの『可能性の選択』により次々と消え去った。


「――――さあ、EB5757、そろそろ決着を付けよう」


 コノハは一言吐くと、一気に跳躍して、『あの目』との距離を詰めた。
コノハが繰り出すのは単純な殴りだ。
何も込められていないかのように見えるそれには、『幾重にも重なった』彼の祈りが込められている。
 対する『あの目』はまるで防御壁を張るように、
『自らにコノハの拳が届かない』という『可能性を創造』し、張り巡らせる。斥力が破裂した。
この拳には彼の全てが込めてある。
Cを助け、そして、彼女に助けられ、一度は絶望しその生存を諦めたヒビヤを、
ようやくその手に取り戻したのだ。

 ヒヨリとヒビヤの悲劇は、お前を消す事で終わる――。

 『コノハ』の『可能性選択』を込めた拳と、
『あの目』の『可能性創造』を込めた防御壁がぶつかり合い、じりじりと押し合う。
 『コノハ』は『可能性世界』の為だけに『造られた』、『人造人間』である。
『物理干渉』を奪われていたのは、逆説的に言えば、
『可能性世界』内では『コノハ』は『あの目』を凌駕するスペックを誇るという
『可能性』を示唆する。
 しかし、コノハは、ジリジリと『あの目』の防御壁を押す自らの『拳』――
――その結果が単なる『スペック比』によりもたらされた物ではない事を知っていた。
「な、何故だ?!」
「お前には一生分からないよ」
 『あの目』の防御壁を遂に打ち破ったコノハの拳はそのまま振り抜かれ、
『あの目』の左頬をそのまま打ち抜いた。

 コノハは『あの目』の内部に自らの『可能性選択』の力を侵食させると、
『あの目』がその『能力』を持たないという未来を力付くで選択する。
『可能性世界』の『創造主』たる『あの目』の能力が喪われた事で、
『可能性世界』は崩壊へと向かっていく――。

「急ごう! 皆! 手を出して!」

 コノハがメカクシ団と、ヒヨリとヒビヤに手を差し伸ばす。
 6人がコノハの手をしっかりと握って、『彼ら』は一つの流れ星のように宙に舞い上がり、
『可能性世界』を脱出した。

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