ゼロ 2012-08-12 16:50:55 |
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Ancient Dragons
第三話 大海龍、深海をさまよう神
チャチャとカヤンバがモガの村に来て二日が経ち、賑やかな二人は村人達から気に入られていた。
一方、交易船は出航の準備を進めている。
そしてフェイタリスが村を去る日でもあった。
「今日で皆とお別れじゃのう」
「そうか、お前さんも行っちまうんだったな」
「気が向いたらまたこの村に来るんだよ
男どもにとびっきりの海の幸を用意させてやるからね」
「儂もこの村が気に入っておる、いずれ再び訪ねるやも知れぬ」
「交易船もこの村に度々寄港する
また海に出たくなったら、ここで待っていれば乗せてやるゼヨ!」
「アナタも交易船の仲間ですからね」
「うむ、お主らとの旅は楽しかった
また仕事を手伝わせてもらいたいぞ」
「もしかしたら、オレチャマ達の旅先で会う事があるかも知れないっチャ」
「その時はまた色々お世話してやるンバ!」
「ハッハッハ、それは楽しみじゃのう
では、儂はもう行くよ」
フェイタリスは村に背を向け、桟橋を歩き始めた。
その時、村を大きな揺れが襲った。
水揚げされた海産物や交易船から運び出した荷物が散らばる。
人々は突然の事に驚き、怯え惑う。
バランスを崩したチャチャが桟橋を転がって海に落ちてしまった。
「いかん!今助けに行くぞ!」
チャチャを追ってフェイタリスも海に飛び込んだ。
「フェイタリスさんって泳げるんでしょうか、あの人の事だから怪しいなぁ…」
結局二人は地震が治まってから、村長の息子によって引き揚げられた。
「よく考えたら儂、水に潜った事も無かったわ」
「一昨日といい、誰かの為となると周りを見ない人だな、カッハハハハ!」
村長の息子が父親譲りの笑い声をあげた。
その様子を見て、村人達も少しホッとした。
「それより大変なものを見てしまったッチャ!」
「ん?何を見たんだ、チビすけ」
「ブー!チビすけヂャないッチャ!
ま、それはおいといて、村の下にでぇ~~~っかいモンスターが潜っていったのチャ!
きっとあれがさっきの地震の原因ッチャ!」
「バカな、地震を起こすほど巨大なモンスターなど…何かの見間違いではないのか?」
興奮気味に話すチャチャを問いただす村長。
「横槍失礼するが儂もしっかと目にしたぞ
白い巨体と赤い光、あれは古龍じゃな」
「なんと…それほど巨大な古龍がいては、村はただでは済まん…」
村長が表情を曇らせる。そんな彼の肩をフェイタリスが優しく叩いた。
「いや、状況はまだ絶望的ではないぞ
どうもあの龍は何かに苛立っておるようじゃった
その原因さえ取り除ければ、あるいは、な?」
「よーし!なら古龍の調査だ、ギルドに連絡してハンター達を呼ぼう!」
「いや待て、調査なら儂に任せてくれ」
「お前さんに?相手は超巨大な古龍だ、とにかくハンターズギルドに報告をしないと」
「そうするにしてもじゃ、ある程度確かな情報がなければ本格的には動いてくれんじゃろう
突拍子もない話じゃからの
そこで儂が先だって調査を行う」
「そういう事なら確かに適役かも知れないゼヨ
なにせ、あのラギアクルスと対等に睨み合った女
底知れぬ胆力を垣間見たゼヨ」
「なんだって!ラギアクルスと!?
お前さん、一体何者なんだ!?」
「そうじゃのう、お主らにならば…これを見よ!」
フェイタリスの前髪が逆立ち、四本の黒い角へと変貌を遂げる。二股に別れた角は王冠のようにも見え、禍々しくも神々しい。
「儂は白のフェイタリス
龍と人の間を取り持つ為、旅をしておる
この村の未来、儂に任せい!」
「よし、フェイタリス、俺は漁師達と一緒にお前さんに泳ぎを教える!」
「無謀なようだが、誰かがやらねばならん事か…
問題は呼吸だな、ワシも何か方法を調べてみるぞ」
「ならばワシらは物資調達の計画を立てるから、必要になりそうな物があったらドンドン言うゼヨ!」
「可能な限り迅速にかき集めてきますよ!」
「ヂャあオレチャマはあの龍を追い払って、この村の英雄になってやるッチャ!ブッブッブー!」
「チャチャ、抜け駆けは許さないっンバ!
ワガハイもラブ&ピースの為に戦うンバ!」
「フフフ、皆頼もしい事じゃ
これならなんとかなりそうではないかのう、村長よ」
「うんむ、こんな時こそ笑顔を忘れてはならなかったな、カッハハハハ!
さて、これより件の古龍を、海の民の伝承に現れる『大海龍』の名で呼ぶ事とする
皆の者、大海龍調査に向けて行動を開始してくれい!」
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