ゼロ 2012-08-12 16:50:55 |
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Ancient Dragons
第二話 チャチャとカヤンバ、まいごの奇面族
「あれがモガの村か、小さいながら活気がある村じゃのう」
「ええ、皆イキイキとした良い村なんですよ」
「海産物はもちろん豊かな森の資源にも恵まれ、 こことの取引を望む取引先は多いんだゼヨ」
船が村の船着き場へと入ると、村長をはじめ、多くの村人達が出迎えた。
「交易船よ、よく来てくれたな
お前さんらが来ると村が賑わうわ、カッハハハハ!」
「漁師達も事前の知らせを受けていつも以上に気合い入れてたんだ、今回もドンドン取引しようぜ!」
「おう、交易で世界を繋ぐゼヨ!」
「お姉さん見ない顔だねぇ、新入りかい?」
クルー達と共に積み荷の搬出をしていたフェイタリスに、漁港の女将が声をかけた。
「いや、儂は海を渡りたくてのう、船に乗せてもらってきた者じゃ
次の航海まで、この村で交易船の手伝いをしておるから、よろしくたのむ」
「よしきた!アンタにも村自慢の新鮮な魚で寿司なんかを振る舞ってあげるよ!」
「それはよいの、楽しみにしておこう」
そんなフェイタリスの所へ、村の子どもが走ってきた。
「あっ!ねえねえ、お姉さん、お姉さんはボクの話を信じてくれるかな?」
「ん~?どんな話じゃ坊や、聞かせておくれ」
「ボク、昨日、森の中で小人の妖精を見たんだよ
妖精は二人いてね、なんだか喧嘩してたみたいだったんだ、信じてくれる?」
「うむ、小人の妖精とは興味深いのう
時間の空いた時に儂も探してみようかの」
「信じてくれるんだね、ありがとう!
村の皆に話しても見間違いじゃないかって聞いてくれなかったんだ」
「そうかそうか、儂が見つけた時にまた喧嘩しておったら止めてくるわい」
その日の夜
森の中で何やら言い争う者達がいた。
「あれもこれもそれもオマエのせいだっチャ!」
一人は巨大なドングリをくりぬいたお面を被った子ども。
「ダァー!どれも全部オマエがワガハイの足を引っ張るからっンバ!」
もう一人は青く塗ったヤシの実にカニ爪を取り付けたお面を被った子ども。
「ブー…それよりなによりお腹が空いたっチャ…」
「ダ…今日は魚釣りの調子が悪かったンバ…」
「タンジアチップスでも食べるかえ?」
「ブブ!食べるっチャ!欲しいっチャ!」
「ワガハイにもプリーズっンバ~!」
「ほれ、仲良う食べるんじゃぞ」
「チャンキュー!ところで…」
「オマエ誰なンバ?」
「ん、儂?白のフェイタリスという者じゃ」
フェイタリスは村に戻る途中で村長の息子と出会った。
「フェイタリス!夜の間は森に入るなと言っておいたはずだろ!聞いてなかったのか!」
「ひっ!す、スマン…じゃが儂なら大丈夫…」
「調子に乗るな!どこの都会から来たのか知らないが、自然は恵みばかりじゃないんだぞ!
まったく、村の皆がどれだけ心配した事か…」
「心配?…してくれていたのか?
今日来たばかりの余所者の儂を?」
「村の子どもが言ってたんだ、あのお姉さんはちゃんと話を聞いてくれる良い人だ、ってな
その子も心配しているんだぜ」
「…反省しよう、もう勝手な事はせんよ
あの子にも謝らねばな」
「それでお前さん、何をしてたんだ?」
「実はこの子らをの…」
フェイタリス達が後ろを振り返ると、誰もいない。
いや、よく見ると岩の陰からカニ爪がはみ出ている。
「ふふふ…『チャチャ』、『カヤンバ』、出てこい
この者は良い人じゃぞ」
二人はそ~っと顔を出した。
「コイツらは奇面族の子どもか!」
「うむ、件の少年が言うておった小人の妖精じゃよ
道に迷ってひもじい思いでもしておらんかと思って探しに来ていたのじゃ」
「ノーっンバ!これは自発的なトラベルなのダ!」
「だからオレチャマ達は迷子じゃないっチャ!」
「お前さん、そういう事だったのか…!
それにしても仲の良さそうなヤツらだな」
「ブー!こんなのはただ幼馴染みなだけっチャ!」
「つまりフレンドでもなんでもないっンバ~!」
「………やはり、仲が良さそうじゃな」
フェイタリスと村長の息子の笑い声がモガの森に響いた。
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